また新しい1年が始まった。2020年のネットメディアは、どんなプラットフォームで、どんなコンテンツが拡散されるのか。J-CASTニュース編集部員の視点で、一足早く予想してみた。
音声・文字コンテンツの可能性
まず来年期待できるのが、「~しながら」でも楽しめる音声コンテンツだ。ここ数年で、VoicyやRadiotalkといった国産ラジオ配信サービスが誕生し、音楽配信サービスのSpotify(スポティファイ)にもポッドキャスト(ポッドキャスティング)機能が追加された。
ポッドキャストといえば、iPod全盛期の00年代後半にブームが起きたが、ここ数年は下火だった。しかし、AI(人工知能)スピーカーの普及なども背景に再評価。ニッポン放送が企画した「JAPAN PODCAST AWARDS」も開始され、存在感を増しつつある。
文字ベースのコンテンツも、ブログブームから約10年を経て、改めて注目されている。その中心にあるのは、ピースオブケイクが運営するnote(ノート)だ。19年11月には『文藝春秋』がデジタル版をnote上でスタート(月額900円)。100年近い歴史を持つ老舗月刊誌が、新興サービスでサブスクリプション(定期購読)を始めるとあって、メディア業界に衝撃が走った。
12月に入ると、元でんぱ組.incの夢眠ねむさんがバカリズムさんとの結婚を発表し、「いきものがかり」が新アルバム発売に合わせた特設ページを開設するなど、noteを起点として、ニュースに発展することも増えた。今年は、さらに情報発信基地としての役割が強まっていくだろう。
大手メディアの動きも見逃せない。まずは10月に予定されるヤフーとLINEの経営統合だ。重複事業の再編は、経営統合後に「プロダクト委員会」が検討する予定になっている。仮にYahoo!ニュースとLINE NEWS、livedoorニュースが統廃合されるようであれば、ネットニュース各社は戦略を考え直す必要に迫られる。
NHKの常時同時配信も、東京五輪までに始まる予定だ。具体的な内容は、総務省との調整を待つ必要があるが、リーズナブルな価格で提供されれば、動画配信サービス業界で、それなりのポジションになると思われる。また、春ごろから予定されている、携帯電話の5G実用化を境に、より高画質・長時間の映像コンテンツが主流になっていくだろう。
「ウチの前に聖火リレーが通った!」
2020年といえば、なんと言っても東京五輪・パラリンピックだ。前回大会(1964年)はもちろん、その後の札幌、長野であっても、ツイッター実況はできなかった。国民的イベントが「可視化」されるとなれば、長所も短所もある。
メリットはやはり、興奮を共有できる感覚だ。新元号に切り替わった昨年4月30日から5月1日にかけては、SNSが「令和」一色になった。それと同じようなリアルタイム感が、毎日のように繰り返され、ニュースアプリによる「ネタバレ」に一喜一憂する人もいるはずだ。
一方、お祭り気分で忘れがちなのが、プライバシーの観点だ。誰しも可能性があるのが「住所バレ」のリスク。全国各地を聖火リレーがめぐるが、安易に「ウチの前通った!」と写真付きツイートをすると、おおよその住所が知られてしまう。プライベートを日々投稿しているSNSでは、注意する必要があるだろう。
世界各国から人が集まれば、人種や宗教などを揶揄するヘイトコメントも増えそうだ。国際オリンピック委員会(IOC)のオリンピック憲章には、こんな一文がある。
「スポーツをすることは人権の1つである。すべての個人はいかなる種類の差別も受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければならない。オリンピック精神においては友情、連帯、フェアプレーの精神とともに相互理解が求められる」(日本語版)
ネットでの五輪実況も同様に、フェアプレーの精神が重要になってくるだろう。
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)