中曽根康弘氏、自ら遺した「誤算」の記録 オフレコメモが語る「靖国公式参拝」...85年夏、何が起きていたのか

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オフレコメモの出所は...?

   靖国神社には1978年にA級戦犯が合祀されており、周辺諸国が問題視していた。これを念頭に置いた「A級戦犯の問題もあるが」という質問には、A級戦犯は追悼の対象外だとの見方を示した。

「私は戦没者を追悼する、といっている。A級戦犯は戦没者ではないよ。あれは戦後、外国の裁判で絞首刑になったので戦没者ではない」

   一連のメモのうち、上記の中曽根氏の発言については、語尾などの細かい部分を含めて、ほとんど同じ内容が「中曽根内閣史」(世界平和研究所、1996年)に収録されている。この書籍の「はじめに」では、

「番記者との一問一答の記録は、毎日新聞社政治部の提供による資料に基づく。在任最後の数ヵ月分は整理されて同社のデータベースに入力されているが、その他大部分は手書きのノートのまま提供していただいた」

とある一方で、国会図書館のウェブサイトでは、中曽根氏から寄託された文書の内容を

「書類、執筆した小冊子、雑誌記事などの刊行物、支持者からの新聞記事コピーなど。ほかに『中曽根内閣史』(世界平和研究所編、刊行、1995~1997)編纂時に収集した資料を含む」

と説明している。メモの一部はファクスでやり取りされたとみられ、ヘッダ部分には「T-マイニチ オオクラショウ」「T-マイニチ シュショウ」といった文字もある。一連のオフレコメモは、「中曽根内閣史」編さんの際に毎日新聞社から中曽根氏側に提供された可能性がある。

   86年以降の参拝について極めて楽観的だった政府・与党だが、85年9月には中国で靖国参拝を非難するデモが発生。事態は一変する。そしてこれが、35年後の現在までくすぶる靖国問題の起点の一つとなった。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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