「ぼくの場合、逃げる=(母親を)見放すなんです」
今年7月に本を出版後、オファーがあり、東京や大阪で開かれたトークイベントにも参加した。トークイベントに臨んだ際の様子をこう振り返った。
「世間からどう見られているか一番、気にしながら生きてきた。そんな人間がトークイベントの会場にいた時に、最初は目の数がすごくて怖かったですね。しかも、事情をみんな知っている上で、前に出ていくのはすごく怖かった」
一方で、スマートフォンでの隠し撮りをされたり、やじも飛ばされたりするのではないか、という点も気にしていたという。「写真はNGにしてもらった。隠れてスマホで撮られたりするのかなと思って挑んだけど、割とみんなルールを守っていました。やじなども一切飛ばずに、『あんたは悪くないよ』、『頑張って』、そういった意見をもらえたこともちょっとびっくりしました」。
トークイベントでは、前向きな言葉をかけてもらった。「『親がやったこと』、『逃げたらいいんだよ』とか、そういった意見もあったんですけど、ぼくの場合、事が死刑事件で、逃げる=(母親を)見放すなんです。懲役刑であれば、逃げても(母親は)死にはしないんですけど。死刑囚は身寄りもいない順番に処刑されていくと弁護士から聞いたことがあった。今でも面会には月に1回2回行っているし、まだ家族のバックアップがある。優先順位としては、身寄りのない人に比べれば(処刑が)遅くなると聞いていた。『いやだったら向き合わずに自分の人生を生きたらいいんだよ』という声をたくさん頂くんですけど、ぼくの場合逃げる=処刑、逃げられないというか。結婚してマイホーム建ててみたいな一般的な幸せとの両立はものすごく難しい。やろうとしたけど失敗に終わった。他府県に引っ越してパートナーをつくっていたとしても、いつの日かニュースで処刑ということが流れてくるんじゃないか」。