ドネアはベストコンディション、メンタルも...
戦前の専門家の予想の多くは井上のKO勝利、もしくは圧勝だった。対戦時の両者の年齢差は10歳ほどあり、ドネアの体力的な衰えを指摘する声もあった。だが、さいたまスーパーアリーナのリングに立ったドネアはベストコンディションで、メンタルも充実していたようにみえた。
この試合の大きなポイントとなったのが2回、9回、11回だろう。2回にドネアが放った左フックが井上の顔面をとらえ右目上を切り裂いた。井上にとってパンチによる顔面のカットはプロ、アマ通じて初めての経験だった。後日には、右目眼窩底骨折の重傷だったことが判明。パンチによるカットのため、出血がひどくなれば試合を止められTKO負けとなるだけに、以降は慎重に試合を進めざるを得なかった。
9回はドネアにとって悔やまれるラウンドになった。ドネアは右ストレートのカウンターで井上をぐらつかせるも詰め切れなかった。「もっとパンチを打ちこめていたら、もしかしたら倒せたかもしれない」と試合後に振り返ったように最大のチャンスだった。8回には井上の右目上の出血が激しさを増し、流れがドネアに傾いていたラウンドだったが、あと一発が出なかった。