東京の渋谷と浅草を結ぶ東京メトロ銀座線は、現渋谷駅を移転工事のため2019年12月27日限りで営業を終了し、2020年1月3日から新しく移転した渋谷駅で営業を開始する予定だ。最終日の27日は別れを惜しんで現渋谷駅の写真や思い出がツイッターなどに多く投稿されている。
1938年に開業した現渋谷駅ホームは廃駅となるが、日本最古の地下鉄の銀座線には既に移転・廃止で3駅の廃駅があり、4駅目となる。それぞれの廃駅は現役の「近代化遺産」ともいえる銀座線に今もひっそりと残っている。
92年の歴史。廃駅はいかに生まれたか
銀座線は1927年12月30日に、当時の東京地下鉄道により上野~浅草間が初めて開業した。以後東京地下鉄道は上野から南へ路線を伸ばしていき、1930年1月1日に上野~万世橋間が開業する。この万世橋駅は神田川の下を掘削する万世橋~神田間の工事中の仮設駅で、1931年11月21日に万世橋~神田間が開通すると、現神田駅にとって代わられる形で廃駅になった。これが1つ目の廃駅だ。
現在の銀座線は戦前に全区間が開通済だが、浅草~新橋間は東京地下鉄道、新橋~渋谷間は東京高速鉄道と2社により建設された。先に新橋まで開業させたのは東京地下鉄道で1934年6月21日に開業。東京高速鉄道は5年後の1939年1月15日に新橋まで開通した。2社が乗り入れたため、新橋駅は東京地下鉄道と東京高速鉄道の駅ができたが、同年9月に渋谷~浅草間の通し運転が始まる。以降、東京地下鉄道の駅が現在に至るまで使われており、東京高速鉄道の新橋駅がわずか8か月で廃駅になった。この新橋駅は「幻の新橋駅」として知られ、時折イベントで公開されて臨時列車が運転されるなどしているが、繰り返すが廃駅はこの駅だけではない。
戦後は現・表参道駅の近くに3つ目の廃駅ができる。1938年11月18日に開業した表参道駅は、現在の駅よりも渋谷寄りにあり、駅名も当時は青山六丁目、後に神宮前駅に改称される。1972年に千代田線表参道駅が開業すると銀座線の駅も表参道に改称、しかし乗り換えは一度地上に出なければならなかった。1978年8月1日の半蔵門線開業に合わせて銀座線ホームが現在地に移転し、半蔵門線と銀座線は同じホーム上で乗り換えられるようになる。千代田線との乗り換え距離も大幅に短縮され、代わりに40年間使われた旧銀座線ホームが廃駅に。後から開業した千代田線・半蔵門線との乗り換えの便宜のために、もともとあった銀座線の駅を廃駅にして移転させたことになる。
そして2019年末から2020年にかけての渋谷駅移転工事で現・渋谷駅ホームが廃止され、銀座線に4つ目の廃駅ができることになる。渋谷~浅草で14.3kmと東京の地下鉄では副都心線に次いで短い路線だが、4駅もの廃駅ができるのも、銀座線の歴史の長さを物語るかのようだ。