「在職老齢年金」の見直し内容
ここに至る過程では、財務省が後期高齢者を「原則2割負担」に引き上げるよう主張したのに対し、医師会をバックにした厚労族議員が反発し、公明党も強く抵抗した。結果、一定の所得があれば2割負担にするという意味で財務省の主張は通ったが、「原則2割」は明記できず、あくまで「原則1割」で、2割負担は一部例外的ということになった。2割負担になる人の割合がどの程度になるかについて、中間報告には「高齢者の生活への影響を見極め、適切な配慮を検討する」と書くにとどめた。
年金分野では、まず、多様な就労への対応や、より長く働くことへの支援がテーマで、そのために現行60~70歳の間で選べる公的年金の受給開始時期を上限75歳に引き上げることはスンナリ決まった。雇用について、企業に70歳までの就業機会の確保を努力義務で求めたのとセットで、安倍首相が唱える「生涯現役」の流れに沿ったものだ。
一方、年金についてもめたのが、働いて稼ぎがある高齢者の年金を減額する「在職老齢年金」の見直しだ。厚生労働省は「働く意欲を阻害する」という理屈で、減額になる線引きを、65歳以上で「月収47万円超」から「62万円超」への引き上げを提案、反対を受け「51万円超」に修正した。だが、「高所得者優遇」との批判が根強く、与党の理解を得られず、結局、65歳以上の引き上げを断念し、60~64歳で「月収28万円超」の基準を65歳以上と同じ「47万円超」にすることだけで決着した。
年金のもう一つの焦点が、パートなど短時間労働者の厚生年金への加入を義務づける企業規模要件の見直し。現在は「従業員501人以上」となっている要件を、2022年10月に「従業員101人以上」、24年10月に「51人以上」に拡大することになった。厚生年金に加入する人が増えれば年金財政が安定するし、「51人以上」になれば65万人が新たに加入する見通しで、こうした労働者は受け取る年金が増える。
問題は年金保険料が労使折半ということ。負担が増える中小企業から反発が相次いだ。企業規模の違いで社会保障の扱いが異なるのは不合理なことは誰しも求めるところだが、加藤勝信厚労相が当初目指した「企業規模要件の撤廃」には踏み込めなかった。