急拡大するユーチューバー市場で、新たな動きが起きている。売り抜けとばかりに、チャンネルの売買が盛んに行われているのだ。
ただし、利用規約上、こうした行為は"グレーゾーン"とみられる。運営会社のグーグルに見解を聞いた。
月間売上530万円
マーケティング事業を手掛ける「CA Young Lab」(東京都渋谷区)などの調査によると、2019年の国内のユーチューバー市場は約400億円(前年比約1.2倍)を見込み、22年には579億円へ成長すると予測する。動画の再生回数に応じて得られる広告収入や、広告主との協業によるタイアップ広告などが収益源だ。
市場の後押しを受け、ユーチューバーが間断なく誕生する一方、ユーチューブチャンネルの売買も活発だ。複数の事業売買仲介サイトでは、チャンネルの出品が目立つ。
販売は個人・法人問わず、ジャンルは「ゲーム実況」「漫画」「料理」「ニュース」「ASMR(心地よい音を楽しむ動画)」など多岐にわたる。
価格はチャンネル登録者数や投稿数、収益実績などで決まり、数万~数百万円とピンキリ。中には、アニメーションを使ったエンタメ動画を主とする2つのチャンネルが3000万円で成約した例もある。
出品説明欄によれば、2019年7月から運用を開始。合計の動画投稿数は約300本、チャンネル登録者数は10万人で、月間視聴者数は2500万人に上る。収益も公開されており、ある月の売り上げは530万円、人件費を除いた営業利益は450万円だったという。
運用は個人で行い、動画制作はすべて外注。作業量は「副業レベル」と費用対効果を強調している。
そのほか、ユーチューブ関連の事業(動画制作やマーケティング支援)を2000万円〜4000万円で譲渡する案件も見つかった。
なお、チャンネル売買はグローバルな潮流とみられ、海外の事業売買仲介サイトでも出品が盛んだった。
登録者「水増し」の可能性も
ただ、購入にはリスクが考えられる。
オークションサイトでは、チャンネル登録者数を増加させるサービスが多数出品されており、水増しされている可能性は否めない。ユーチューブでは、こうした実体を伴わない登録者は「不正」とみなされ、削除される恐れがある。
さらに、著作権侵害などコミュニティガイドラインに3度違反(諸条件あり)すると、チャンネルは永久に削除される。そのため、購入したチャンネルが"前科持ち"だった、とのリスクもはらむ。
運営会社であるグーグル日本法人の広報部に見解を求めると、「YouTubeにおける禁止行為は、こちらの利用規約内、『本サービスの利用』にある『本サービスの利用には制限があり、以下の行為が禁止されています。』部分をご参照ください」と明確な回答は避けた。
該当部分には10の禁止事項があり、その一つに「本サービスまたはコンテンツのいずれかの部分に対しても、アクセス、複製、ダウンロード、配信、送信、放送、展示、販売、ライセンス供与、改変、修正、またはその他の方法での使用を行うこと」などとある。チャンネル売買は限りなく黒に近いグレーといえそうだ。
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)