重文SL保存施設も閉園検討 地方の鉄道遺産が直面する苦境とは

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地方の鉄道遺産が直面する「課題」

   閉園検討の理由については、運営企業の宮津海陸運輸(京都府宮津市)に「広場」の車両整備担当の社員が1人しかおらず、車両の老朽化も進んでいるためと報じられていた。J-CASTニュースが26日、宮津海陸運輸に改めて取材したところ、人手不足以上に展示車両の老朽化の方が深刻な理由だと答えた。27両と数が多く、錆の進行や木製部分の劣化が激しくなっていた。特に腐食が進んだ木製部分で来園客がけがをすることを危惧している状況だ。それでも車両については「貴重な文化財なので、このまま朽ちていくよりは残せる方法を色々検討し、残していきたい」と語った。

   展示車両の劣化と人手不足は、いずれも加悦SL広場に限らず、地方の鉄道保存に共通する課題のようだ。

   18年12月には滋賀県彦根市の彦根駅で不定期公開されていた近江鉄道の「近江鉄道ミュージアム」が展示車両老朽化により閉館となり、保存していた同社の電気機関車の多くが解体された。

   加悦SL広場の他にも、地方には廃線・廃駅を活用した鉄道保存施設が少なくない。昭和50年代(1975年~)以降に地方で国鉄・私鉄ともにローカル線の廃線が進んだことも背景にある。しかし、保存車両も錆びや塗装の剥離から保護するためにメンテナンスが必要であり、そこに費用とマンパワーが不可欠だ。施設ができた頃、熱心に保存に携わった人材が引退すれば、後継者不足に直面する。地方では後継者になりうる人物・団体も容易には見つからない。既に昭和40~50年代に廃車後各地に保存された蒸気機関車が、状態の劣化で解体されるケースは多発している。加悦SL広場の閉館は決定事項ではないが、人手不足と地方の衰退は、鉄道趣味の分野も無縁ではないようだ。

   前出の近江鉄道での保存車両のうち、「ED31形4号機」は滋賀県東近江市のびわこ学院大学の学生らのクラウドファンディング(CF)により解体を免れ、八日市市内での保存が決まっている。このような有志の善意に頼らなければ、地方では次世代への鉄道遺産の継承は困難ではないだろうか。本州のJR三社や大手私鉄が運営する鉄道博物館は活況を呈しているものの、地方では苦境にあえぐ鉄道遺産もあり、後者をいかに継承していくかは観光・産業史の視点からも無視できない課題となるかもしれない。

(J-CASTニュース編集部 大宮 高史)

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