「温度差はあったと思います」
確かに広島の歴代アウェーユニは、特にサプライヤーがナイキになった11年以降、紫以外の色を使ったものが散見される。過去にはオレンジや蛍光イエローといった特徴的な色もあった。
「ナイキさんからこういう色はどうですかと相談を受け、クラブがそれに承諾して決めてきました。今回もその流れを踏襲しています。
ナイキさんは東京五輪で日本の公式スポンサーではありませんが、その中で五輪をどう盛り上げていけるかという戦略の1つが今回のユニフォームです。ナイキが提供する3クラブ(広島、鹿島、浦和)のアウェーユニフォームは日の丸を意識した色使いで統一し、五輪を盛り上げたいと提案を受けました。クラブもセカンドについては紫にこだわらず、いろいろなチャレンジをしてきました。だから『やりましょう』と合意しました」(前出の広報担当者)
今回の赤への反発は「想定外の反応」だった。先にあげた過去の例でいえば、オレンジは清水エスパルスや大宮アルディージャ、イエローはベガルタ仙台やジェフ千葉などのカラーと共通する。だが当時、今回のような勢いで批判を浴びることはなかった。担当者は「サポーターの皆さんとクラブとの間に温度差はあったと思います」と話す。
「想定以上に『赤』に対する嫌悪感をサポーターが持っていました。浦和さんについては当クラブの主力選手を複数獲得してきた歴史もあります。同じく赤をクラブカラーにする名古屋グランパスさんにも、FW佐藤寿人ら主力が何人か移籍しています。そういったクラブに対し『悔しさはないのか』という意見もありました。しかし移籍に関しては、相手クラブからオファーを受け、選手自身が最終的に決断することです。我々としてはそこまでのネガティブな考えはありません。
広島カープさんについては、何も媚を売っているわけではありません。広島県にはサンフレッチェやカープさん、Bリーグの広島ドラゴンフライズさんもあり、スポーツ界全体で広島を盛り上げていこう、協力しようという意識を共有しています。カープさんの赤を使ったことには、そうした仲間意識の意味合いがあるのです。しかし、サポーターの中には必ずしもそうは考えない方もいました。ここにも温度差があったと思います」(同)