「貴方のお店、口コミ足りてる?」「インターネット上のネガティブなクチコミでお悩みではないですか?」――。口コミサイトの投稿を有償で引き受ける"クチコミ代行サービス"が、ネット上で広がっている。
しかし、こうした行為は口コミサイトの規約に抵触するばかりか、法的責任を問われる可能性もある。専門家は「仮に事実に基づかない内容であれば、景品表示法の優良誤認または有利誤認にあたる場合があります」と指摘する。
体験談では「前月よりお客様も増え...」
クチコミ代行のA社は、サイト情報によると、飲食店や美容院、病院、電子商取引(EC)サイト向けに、口コミの投稿サービスを販売する。
同社のモニター会員が、契約企業の商品・サービスを実際に利用して書き込むといい、体験談では「早速ご相談させて頂いたところ前月よりお客様も増え、『口コミを見て来た』というお声も頂きました!」と紹介されている。
「低い評価が入る場合もございます」と注記するが、「★2.5より★4のお店だよね!」と好評価を期待できる宣伝をしている。
費用は20件からで、1件あたり8000円~。200件以上では1件あたり6000円~。
B社への依頼は1000件以上
一方、B社は「インターネット上のネガティブなクチコミでお悩みではないですか?」「良いクチコミを増やしていくクチコミマーケティングで解決!」との触れ込みで、批判的な書き込みを目立ちづらくするとアピールする。
19年1月時点で依頼は1000件を突破したといい、支持される理由に「独自のシステムクオリティ」「魅力的なライティング」などを挙げている。
B社は、口コミを自然に増やすためにシステムを独自開発し、ライティングの専門家が魅力的なクチコミを書いていると主張。実際に商品・サービスを利用した上で投稿するのかは不明瞭で、「投稿やアカウントの管理などのシステム的な部分に関しては、企業秘密になりますが、文章作成やネタ撮りなどのアナログ的な部分に関しては、人海戦術でクライアントごとにカスタマイズし、様々な方法で増やしていきます」と説明する。
A社、B社に取材を申し込んだが、期日までに回答は無かった。
多くの口コミサイトが禁止している
こうした"やらせ"行為は、多くの口コミサイトで禁止されている。
「金品またはそれに相当するサービスを受けることを目的とした口コミの投稿は禁止しております」(飲食店情報サイト「食べログ」)
「投稿するコンテンツは、その場所での実体験に基づいている必要があります。評価を操作する目的でコンテンツを投稿しないでください」(店舗紹介の「グーグルマイビジネス」)
「営利的ではないこと販売促進や宣伝を目的とした内容の口コミは投稿できません」(旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」)
「結婚式場等の関係者によるやらせ投稿、または結婚式場等から委託を受けた投稿代行業者等によるやらせ投稿を禁止します」(結婚式場口コミサイト「みんなのウエディング」)
IT法務に詳しい川村哲二弁護士は、J-CASTニュースの取材に「店が依頼するのは宣伝行為、いわゆるステマ(ステルスマーケティング)になります。客観的なレビューでも問題ですが、仮に事実に基づかない内容であれば、景品表示法の優良誤認または有利誤認にあたる場合があります」と答える。処分対象は依頼側となる可能性が高く、消費者庁が措置命令や課徴金納付命令を出すことが考えられるという。
消費者庁の景表法ガイドラインでは、問題となる事例に「商品・サービスを提供する店舗を経営する事業者が、口コミ投稿の代行を行う事業者に依頼し、(中略)もともと口コミサイト上で当該商品・サービスに対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、提供する商品・サービスの品質その他の内容について、あたかも一般消費者の多数から好意的評価を受けているかのように表示させること」を挙げている。
また、依頼側は不正競争防止法(品質等誤認惹起行為)に問われる可能性もあると川村氏は話す。読売新聞によれば、外装工事を手がける「オンテックス」(大阪府)が口コミサイトのランキングを操作し、自社を1位にしたとして、大阪地裁が19年4月、不正競争防止法違反で8万円の損害賠償の支払いを命じた。高松宏之裁判長は「オンテックスが架空の口コミを相当数行い、1位にしたと推認される」と述べている。
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)