「東京五輪・パラリンピック2020」(オリ・パラ)開幕まで200日余りとなった。2019年12月17日には、聖火リレーのランナーも発表され、開催へのボルテージも段々と高まってきている。これに先立って、そのメイン会場となる「新国立競技場」(東京・新宿区と渋谷区にまたがる)も11月に完成した。
ところで、競技場内の写真や映像を見て、ふと、思ったことがある。陸上競技の短距離におけるレースは通常、「1レース8選手以下」で行われる。だが、よく見ると、同競技場には「9レーン」が存在する。旧国立競技場は「8レーン」だった。
日本陸連の規約によると...
なぜなのだろうか? 日本陸上競技連盟(陸連)の規約を調べてみた。
まず、国内、国際的な陸上競技大会を開催することができる公認競技場は、世界陸連(WA)の規則によって厳格に定められている。日本記録や世界記録が出る可能性も大いにあることから、世界共通の「基本仕様」というものの存在が重要となるわけだ。
同規則によると「トラックは8レーンまたは9レーンとし、1レーンの幅は1m220とする」と記してあった。しかし「9レーンが存在する意味」については明示されていなかった。
気になる...。気になって仕方がない......。
さらに、陸連の担当者を取材した。
「向かい風」と「追い風」の別レースでも、同タイムなら同着
担当者によると「9レーンにしなければならない規則は定めていない」としながらも「少なくとも2つのメリットがある」と話す。1つ目の理由は、
「例えば、準決勝で8位通過が同タイムで2人いたとします。この場合、2人とも決勝へ進出し、9名で決勝を行うことができるからです」
例えば100メートルの場合は、「100分の1秒」という極限のタイムを争う。それでも同タイムの場合は写真判定、それでも決着しない場合は「同着」と判断される。担当者によると、
「比較的、よく発生する事象です」
ちなみに準決勝1組が「向かい風」、同2組が「追い風」でも、タイムが同じなら「同着」となる。何だか不公平な気もするが、規則上はそうなっているという。では、もし3人以上が同タイムなら...という疑問も沸くが、その場合は大会ごとの規則に準ずるそうだ。
短距離走における「1レーン」は不利
2つ目の理由として「短距離走における1レーンは不利」ということが挙げられる。なぜか? 現在の競技場トラックは「全天候舗装」と呼ばれ、特殊なゴムの素材でトラックが作られていることに起因する。
「陸上競技のトラックは短距離だけでなく、中・長距離走でも使用しますよね。その際、当たり前ですが、選手は最短距離(1レーン)を主に走ります。となると、1レーンの舗装材がより摩耗してしまいます。このため、短距離レースは1レーンを空けて走るようになってきました。また1レーンの内側には『縁石』(金属状のレールのようなもの)があるので、2レーンより外だと、これを気にせずに走れると言われています」
オリ・パラの「華」と呼ばれる陸上競技だが、意外なところに注目してみるのも面白いかもしれない。
(J-CASTニュース編集部 山田大介)