米アリゾナ州で予定されているボクシングのスーパーミドル級12回戦の計量が2019年12月19日、現地で行われ、元WBCミドル級王者フリオ・セサール・チャベスJr(33)=メキシコ=が契約体重168ポンド(76.2キロ)を2キロ以上超える体重超過を犯した。
海外専門メディア「Fightnews.com」は、チャベスJrが対戦相手のダニエル・ジェイコブス(32)=米国=に罰金100万ドル(約1億1000万円)を支払い試合が行われると報じている。
ドーピング検査拒否で会場がネバダ州からアリゾナ州へ
またしてもチャベスJrが体重超過の失態を犯した。この試合は当初スーパーミドル級リミットの168ポンド(76.2キロ)で行われる予定で、ジェイコブスは167.8ポンド(76.1キロ)でクリア。対するチャベスJrは契約体重を2.1キロオーバーの172.7ポンド(78.3キロ)だった。世界2階級制覇を目指すミドル級の元世界王者による一戦は世界的に注目されていたが、チャベスJrの失態によりケチがついてしまった。
チャベスJrは体重超過の「常習犯」で、これまでも契約体重を守らずにリングに上がることがあった。また、ドーピング違反疑惑がつきまとう。この試合は当初、米ネバダ州で開催される計画だったが、ネバダ州アスレチック・コミッションが義務付けているドーピング検査を拒否したため、会場をアリゾナ州に移して行われることになったという経緯がある。
今年11月から12月にかけて世界レベルの試合でメキシコ人ボクサーの体重超過が相次いでいる。11月23日に予定されていたWBC世界バンタム級指名挑戦者決定戦ではルイス・ネリ(25)=メキシコ=が体重超過。さらに11月30日に予定されていたWBC世界スーパーフェザー級指名挑戦者決定戦の計量でアンドレ・グティエレス(26)=メキシコ=が11ポンド(約5キロ)もオーバーする失態を犯している。そして今回のチャベスJrである。
比嘉は復帰まで2年を要したが...
選手の体重管理について世界的にみて日本は厳格である。国内のノンタイトル戦での体重超過は見られるものの、世界戦において日本人王者が体重超過したのは過去1人だけ。WBC世界フライ級王者・比嘉大吾(24)=白井・具志堅=が、2018年4月の防衛戦で体重を超過したのが初めてで、日本ボクシングコミッション(JBC)は比嘉に対してライセンスの無期限停止処分の厳罰を科した。今年10月に処分が解除され、来年2月に復帰戦を予定しているが、復帰のリングに上がるまで約2年を要した。
世界的にみてプロボクシングは興行ありきのスポーツで、たとえ選手が体重超過を犯してもプロモーターは試合成立を最優先とする傾向にある。ジェイコブスVSチャベスJrの一戦は、ストリーミング配信DAZNが全米中継を予定しており注目度が高く、なおさら試合を中止するわけにはいかず、巨額の罰金が生じても試合を成立させなければならなかったようだ。
メキシコの国民的英雄フリオ・セサール・チャベス氏を父に持ち、WBCの地域タイトルを獲得しながら頂点に登りつめたチャベスJr。甘いマスクと父譲りのボクシングセンスでメキシコでの人気は高いものの、過去には飲酒運転で逮捕され、ドーピング疑惑などスキャンダラスな面を持つ。ここ最近はメディアから練習不足を指摘されることも多く、今回の一戦の予想賭け率は皮肉なことに2キロ以上軽いジェイコブスの16-1となっている。