新幹線殺傷事件の小島一朗被告(23)は、「希望通り」の無期懲役の判決が言い渡されたあと、しばらく量刑理由などに耳を傾けたあと、「控訴はしません。万歳三唱をします」と発言し、大声で万歳を3回繰り返した。
被告による法廷での異例の振る舞いについて、各メディアはどう伝えたのか。
ゴゴスマ石井MC「考えられないですね」と繰り返す
東海道新幹線で2018年6月、乗客の女性2人をナタで切りつけて負傷させ、止めに入った男性を殺害したとして、横浜地裁小田原支部(裁判員裁判)は19年12月18日、小島被告に求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。
被告はこれまでに、「刑務所に一生入りたい」と繰り返し、一方で「自分の命が惜しくてたまりません」と死刑にはなりたくないとする考えを公判で示していた。無期懲役の判決は、検察による求刑通りであり、被告の「希望通り」の結果でもあった。
テレビや新聞にコメントを寄せた法曹関係者らも「聞いたことがない」と感想をもらした被告による「有罪で万歳三唱」について、各メディアの報道ぶりを確認した。
判決当日、結果を速報で伝えた各局の昼ワイドショーでは、弁護士を交えてコメンテーターらが感想を口にした。
「ゴゴスマ」(TBS系)では、判決速報からしばらくして入った「被告が万歳三唱」の情報を受け、MCの石井亮次アナが「考えられないですね」と、少なくとも3回は繰り返した。石井アナは「僕らでもこんだけ腹立ってんのに、ご遺族の方は...怪我した方々は、どういう気持ちの整理をすれば...」とも語った。
同番組で国際弁護士の清原博氏は、判決速報の際には、理不尽な思いはあるが、現状の裁判は「感情だけ」で死刑にはできない仕組みになっており、裁判員らは無期懲役の判決で「しょうがない」という判断しかできなかったと思う、と話していた。一方で「万歳三唱」報道後は、最高裁が1983年に示した「永山基準」(死刑選択が許されるとする9項目)の見直しについて触れ、裁判員裁判が(2009年に)始まり市民感覚を取り入れる前の古い基準であり、最高裁が市民感覚を取り入れた「違う基準」を新たに立てる、ということをしないと、今回の小島被告のようなケースは「適正な処罰はできない」との考えを示した。
「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)は、判決速報前後で同事件を扱ったが、その後は別の話題に移り、「万歳三唱」を受けたやりとりは見受けられなかった。「直撃LIVEグッディ!」(フジテレビ系)では「万歳三唱」報道をうけ、お笑い芸人でコメンテーターの竹山隆範氏が「(今日の判決は)間違った判断をした。レベルの低い判決をしたと個人的には思います」と疑問を呈していた。MCの安藤優子氏は「あまりにショックが大きすぎて...」と感想を述べていた。
新聞の「万歳」見出しに差
翌19日付の大手一般各紙の朝刊(東京最終版)で、見出しに「万歳」の文字を入れた社のうち、3段見出しと最も大きく扱ったのは産経新聞。判決内容を伝える4段見出し(第1社会面トップ=右上部分)の記事に続き、3段見出しで「『控訴しません』被告、万歳三唱」と伝え、万歳の様子を報じた。他にも「『殺害は2人まで』 死刑適用基準 逆手に計画」とする解説記事もあった。
読売新聞も第1社会面トップで報じ、前文あとの2段見出しは「被告『控訴しません 万歳』」だった。被害にあった乗客女性が判決後に語った内容を伝える記事も3段見出しで報じた。
ベタ(1段)見出しで「被告、突然万歳」と取ったのは毎日新聞。第1社会面カタ(左上部分)の記事末尾に続き、該当本文は8行だった。朝日新聞は第2社会面「カタ」(右上部分)で判決記事を3段で伝え、「万歳」の文字は見出しには登場しなかった。記事本文の第3段落で「『控訴はしません。万歳三唱します』と述べ、制止を振り切って実行した」と触れた。関連記事では、2段見出し(「車内の安全対策強化」)で、JR各社の安全対策に関する内容を報じていた。