大学入学共通テストで記述式問題の採点をする予定だったベネッセホールディングスの子会社について、「ペーパーカンパニーではないのか」との指摘がメディアや野党議員から出ている。
夕刊紙記者や野党議員が訪れると、入居企業一覧にもなく
国語と数学の記述式問題については、子会社の「学力評価研究機構」が、2020年度から5年間約61億円の契約で受託していた。萩生田光一文科相が19年12月17日、記述式導入をいったん白紙にすることを表明したが、今後も受託を続ける可能性は残っている。
ベネッセを巡っては、17年にあった高校教員向けの研究会で、共通テスト関連業務を受注していることを示したうえで、自社の模擬試験を紹介していた営業活動が発覚し、文科省がベネッセに口頭で注意したと報じられた。
また、ベネッセの商品企画開発本部長が学力評価研究機構の社長を兼務していたことも分かり、同機構社長は、12月1日付で商品企画開発本部長を止めている。同機構社員も全員、20年2月1日までに兼務を止めるともしている。
教育関係者からは、採点業務をビジネスに利用されるのではとの心配の声も出ているが、ベネッセ側は、こうした疑惑を否定している。
さらに、今回は別の疑惑が持ち上がった。夕刊紙「日刊ゲンダイ」の記者が12月13日、学力評価研究機構のある東京・西新宿のビルを訪れると、入居企業一覧の看板に社名はなく、同機構のスタッフにも会えなかったとして、16日にペーパーカンパニーではないかとの疑惑を報じた。野党の国会議員数人が16日、同機構を訪れると同様な状況だったといい、ベネッセの役員は同機構の入居場所や社員数、電話番号も言えないと答えたとツイッターで報告している。
同じビルにベネッセの新宿オフィスが入っており、学力評価研究機構とは、名前だけの会社で実質はベネッセが仕切っているのではとの疑念が持たれているわけだ。
セキュリティを理由に、社員数などは公表せず
ツイッターやネット掲示板では、学力評価研究機構サイトにある個人情報問い合わせ窓口の電話番号が、ベネッセのサイトで過去にあった進研模試採点担当の別の連絡先と一致しているとの報告も出ていた。
学力評価研究機構のこの番号にJ-CASTニュースが12月17日に電話をかけると、同機構のスタッフが出た。すると、広報担当者はおらず、ベネッセホールディングスの広報担当者に連絡してほしいと言われた。
ベネッセホールディングスの広報部は17日、取材に対する同機構の回答として、「ペーパーカンパニーではございません。多くの社員が業務を行っております」と疑惑を否定した。
「学力評価研究機構は、採点業務を専門的に行っている会社であり、業務の性質上、セキュリティと情報管理の観点から、外部への情報公開を一定以上、制限させていただいております」と回答で説明し、このことを理由に「社員数については公開を控えております。また、電話番号につきましても、お取引先や関係者のみにお伝えさせていただいております。看板は出しておりません」とした。
なお、ベネッセホールディングスは同日、報道関係者に向けて、記述式問題導入の見送りについての同機構のコメントを発表した。そこでは、「ここまで一生懸命準備を進めてこられた受験生の皆様やご家族、学校の先生方が困惑されることを思うと、誠に残念の一言です。当社はこれまで、適正な採点の実行に向け、予定通り丁寧に準備を進めてきましたが、決定を受け止め、今後の対応を速やかに大学入試センターと協議します」としている。同機構のサイト上でも、同様な内容のお知らせをアップしている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)