「中入り後」の取組が終わっても待っていてくれた
少しずつ、潮丸関との距離が縮まっていった。朝稽古が終わったら「ちゃんこ、食って行けよ」とか、大好きだったカラオケに「今度、行こうぜ」とか...。
嬉しかった。
が、場所も終盤に差し掛かると、幕内最高優勝の取材で、奔走する日々が続く。十両から前頭を行ったり来たりする潮丸関に、会えない日々が続いた。大相撲の支度部屋というのは、一番奥に横綱、続いて大関、関脇...と番付順に序列があり、各関取の「明荷(あけに=まわし等の荷物を入れる箱のこと)」が置かれる。
十両~前頭だった潮丸関は、当然、支度部屋の出入り口に近いところに明荷が置かれていた。横綱や大関が通るたびに「ごっつさんす!」、「ごっつぁんした!」と言って、道を開けることが礼儀だ。よって、番付が下の関取は、支度部屋の出入り口に近い方に明荷を置く。
十両や前頭力士は、取組が終わった順に風呂に入り、上位力士より先に支度部屋を出ていく。しかし潮丸関は、横綱や大関が支度部屋で汗を流す中、静岡県民のために、記者の取材を待っていてくれた。慌てて駆けつけると、
「おい、遅いぞ!」
その笑顔が、忘れられない。