「どこの記者だっけ?」 潮丸関から声をかけられたのは、雪がちらつく初場所前だった

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   突然の訃報に、言葉が出ない――。

   大相撲の東関親方(元幕内・潮丸、本名・佐野元泰さん)が2019年12月13日、死去した。日本相撲協会が14日、公式発表した。41歳という若さだった。各メディア報道によると「血管肉腫」だったという。2018年の九州場所(11月)から休場しており、病気療養中だった。

  • 41歳の若さで他界した東関親方(元幕内・潮丸=写真は東関部屋公式サイトより)
    41歳の若さで他界した東関親方(元幕内・潮丸=写真は東関部屋公式サイトより)
  • 41歳の若さで他界した東関親方(元幕内・潮丸=写真は東関部屋公式サイトより)

年下力士からの「顔じゃない」に、グサッときた

   はっきりとは覚えていないが、前職で相撲担当記者だった筆者と、潮丸関が出会ったのは、2007~2008年頃だったと思う。当時の潮丸関は、幕内前頭と十両を行ったり来たりしていた記憶がある。

   メディア業界では「番記者」という言葉が、しばしば使われる。こちらは記者、相手は政治家や財界人、スポーツ選手、芸能人...。人間関係において当たり前だと思うが、初対面では、なかなか話してもくれないし、本音が引き出せない。

   こと、角界においては「顔じゃない」という言葉があった。隠語で「分不相応(ぶんふそうおう)」という意味で、いわゆる身分や能力などを考えてふさわしくないということを言う。 また、非礼や不作法などを叱る場合にも使われる。「顔じゃない」。力士であっても、年下の人間に言われたことに、正直、グサッときた。

   当時の記者は、本場所の結果を伝える以外にも、東北版や静岡版といった、地方の力士の活躍を書く仕事もしていた。その中で静岡市出身「地元のスター」だった潮丸関の活躍は、毎日のように伝えなければならないミッションだった。

   「『顔じゃない』じゃない」ことを伝えるため、毎朝6~7時に東関部屋へ向かった。最初は、知らんぷりだった。付け人にも、相手をしてもらえなかった。それでも、めげずに通い続けた。そんな、ある初場所前のことだった。雪が、ちらつく中だった。

「どこの記者だっけ?」

   初めて、関取から声をかけられた。

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