ボクシングの元WBC世界バンタム級王者ルイス・ネリ(24)=メキシコ=の体重超過へのペナルティーが宙に浮いている。ネリは2019年11月23日に予定されていたWBC同級指名挑戦者決定戦の前日計量で体重超過を犯し試合は中止となったが、12月中旬になってもWBCからの処分は科されていない。体重超過から3週間経ってもWBCからアナウンスがない状態で、このまま処分が科されない可能性も出てきた。
前回と異なるWBCの対応の遅さ
指名挑戦者決定戦で体重超過を犯したネリに対して、これまでWBCが科した「処分」は最新ランキングから除外したのみ。当初からマウリシオ・スライマン会長が示唆した通りのもので、既定路線といえるだろう。スライマン会長はネリの失態について、今後バンタム級で試合することは難しいとの見解を示しているだけで、これまで処分に関して言及してこなかった。
WBCの動きは、ネリが体重超過した2018年3月のタイトル戦の時と比べると大きく異なる。この時は試合の翌日にネリのファイトマネーの凍結と無期限の資格停止処分を科す声明を出した。メキシコに帰国後はネリをWBC本部に呼び出して事情聴取。その後、ネリの処分は6カ月間の資格停止に変更となったものの、WBCの対応は迅速だった。
今回はタイトル戦ではなかったものの、王者への指名挑戦権がかかった試合だった。ネリの体重超過はこれで2度目となり、再計量を拒否して金銭交渉で試合を成立させようとした陣営の姿勢にも批判が集まっている。結果、試合が消滅したため、対戦を予定していたエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)は割を食う形で、指名挑戦権を獲得する絶好の機会を失った。
契約続行ならば今後も大舞台に立つ可能性が
ここ最近、ボクサーの体重超過が相次いでおり、世界的にみてもこの問題は深刻である。今回のように対戦相手が体重超過を問題視して試合が中止となるケースは海外では少ない。試合そのものが無くなることを避けるために、プロモーターがファイトマネーをつり上げてグローブハンデをつけたり、当日計量にリミットを設けるなどの手段を用いて試合を強行するケースが多くみられる。
ネリは体重超過の他にもドーピング疑惑などリング外での行動に注目が集まりがちだが、米国内でネリのボクサーとしての力量が高く評価されていることも事実。ネリは米国の大手プロモート会社と契約しており、今回の件で契約が解除されなければ今後も大きな舞台が用意されるとみられる。
日本のボクシング関係者のなかには、ネリの2度にわたる体重超過を重く受け止めるものが多数を占める。WBCの対応の遅さに疑問を呈する関係者もおり、「WBCはランキングから外しただけでうやむやにするのではないか」との声も上がっている。WBCは年内にも処分を科すのか。世界の主要4団体のひとつとして毅然とした対応が求められる。