ルノーとの関係はどうなる
本業の自動車製造・販売は厳しい立場に置かれている。ゴーン時代の拡大路線が裏目となり、主力市場の北米では販売奨励金による実質的な値引きで日産のブランド力が低下。インドやインドネシアなどの新興国で販売を拡大しようと現地に設けた工場は、販売台数が伸びず稼働率の低下に苦しんでいる。新体制はこうした目の前の課題に早速取り組むが、同時に重要となるのがルノーとの距離感だ。
ルノーは日産株の約43%を保有する筆頭株主だが、経営が混迷する前の日産はルノーを販売台数で上回っていた。この「ねじれ」が、ただでさえ複雑な両社の関係と社員の感情を、一段と複雑にしていた。さらに、両社を結びつける立場だったゴーン前会長が経営から去った後、フランス政府の意向を受けたルノーのスナール会長が日産に経営統合を求めたため、両社の行き違いが表面化していた。そもそも次世代技術の開発には連合内の協力関係が不可欠であり、日産は経営の独立性を維持しながら連携を進めるという難しい舵取りに挑もうとしている。
ルノーとの共同調達を担当したこともある内田氏は会見で、ルノーとの経営統合について「現時点では、スナール会長とまったく話をしていない」と述べたうえで、連合内の協力強化を先行させる意向を強調した。日産の経営立て直しを優先させなければ、連合そのものの先行きが危うくなるとルノー側が認識して、経営統合構想をひとまず棚上げしたとの見方もある。日産の指名委員会にはルノーのスナール会長も加わっており、三頭体制の人選はルノーの意向も反映されていると考える方が自然だろう。
ひとまずはルノーとの「休戦状態」の中で、本業の立て直しと連合内の協力深化に専念することになる日産。その後には、世界の自動車業界で活発化する再編をにらみながらの神経戦が待ち構えている。