一見強力な「日立化成」というカードだが...
日立製作所は鉱山で使う小型モーターの開発から出発。戦後、高度成長の波に乗って重電から家電まで幅広く手掛ける総合電機として発展した。バブル崩壊後の景気低迷のなか、グローバル化の荒波も受けて家電の低価格化などで収益が低迷したが、「総合」の旗を掲げ続けた。それも、2008年のリーマン・ショックを受け、2009年3月期には7873億円という当時の日本の製造業として過去最大の最終赤字を計上するに及び、「選択と集中」に大きく舵を切った。
具体的には、事業や子会社の再編や売却を思い切って進めた。2012年にハードディスクドライブ(HDD)事業を米ウエスタン・デジタルに売却、2014年には三菱重工業と火力発電事業を統合、2017年に半導体製造装置の日立国際電気などを米投資会社に、2018年にはカーナビのクラリオンを仏社に売却するなどの結果、かつて1000社を超えていた連結子会社数は2018年度末時点で840社にまで減少。20以上あった上場子会社も、今や日立化成、日立金属、日立建機、日立ハイテクノロジーの4つだけになった。
日立化成は日立金属とともに、ものづくりの基礎である素材を担い、一見、IT時代にふさわしい子会社に思える。ただ、これらの素材は景気変動の影響を受けやすく、安定して利益を稼ぐのが難しくなっていた。日立化成の業績は、2018年度の売上高が6810億円、売上高営業利益率は5.3%、2019年度の見通しも、それぞれ6400億円、4.7%にとどまる。