世界反ドーピング機構(WADA)は2019年12月9日、ロシアのドーピング不正に絡むデータ改ざん問題を巡り、ロシアを「2020東京オリンピック・パラリンピック」をはじめとした各競技の世界選手権など、主要大会から4年間除外する厳罰処分を下した。
「世界一のチーム」擁するも
ロシアといえば体操、新体操、バレーボール、アーティスティックスイミング(=アースイ、以前のシンクロナイズドスイミング)といった種目で世界をリードしてきた。特に新体操、アースイでは五輪5連覇を果たすなど、押しも押されもしない世界一のチームだ。
しかしWADAは9日、スイス・ローザンヌで行われた会議でロシアを「ドーピング不正に絡むデータ改ざんがあり、向こう4年間の主要大会出場を除外する」という過去最大級の厳罰に処した。
これに対し、ロシアのプーチン大統領、メドベージェフ首相は「スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴する」としているが、CASの裁定には時間がかかるため、実質上「2020東京オリ・パラ」へロシアとして出場する道は断たれたと言っていい。
ただし「潔白」が証明された選手は、個人資格で参加できる。「2018平昌冬季五輪」に個人で出場した場合も、ロシアという国ではなく「OAR=ロシアからの五輪選手」という扱いになった。とはいえ、特に団体競技に関しては「2018平昌冬季五輪」で、男子アイスホッケー代表が「OAR」として金メダルを獲得したような例はあるとはいえ、影響は免れ得ない。
何より、金メダルを取って表彰台の一番上に立っても「ロシア国旗→五輪旗」、「ロシア国歌→五輪歌」という待遇だ。「2016リオ五輪」で計56個のメダルを獲得したスポーツ大国。世界のスポーツ界にも大きく影響する。
また「4年間」という期間も厳罰だ。2022年に開催される北京冬季五輪も「クリアした個人の集合」でしか、団体競技には出場できない。
ホストタウンも困惑...
ロシアの除外は、日本国内にも大きな影を落としている。同国の体操競技合宿地となっていた新潟県加茂市は、施設への設備投資等で7000万円近い資金を投じた。このうち半分は国の予算だということだが、半分は市民の税金が充てられている。
各メディアが加茂市民に取材したところでは「(多額の税金を投入したのに)残念...」、「街の活性化が...」といった声が多数、聞かれた。
イタチごっこが続くドーピング問題。大学でスポーツ科学を学んだ記者の指導教授は、かつてこんなことを言っていた。
「いっそのこと『ドーピングOK』というカテゴリーを作ってしまえばどうか? その方が、もめ事は減る」
極論ではあるが――。
(J-CASTニュース編集部 山田大介)