今月中(2019年12月)にも決まる20年度税制改正大綱へ向けて、NISA(少額投資非課税制度)をめぐる報道が相次いでいる。
現状では「一般NISA」と、長期投資向けの「つみたてNISA」、20歳未満の「ジュニアNISA」があるが、その枠組みが少しずつ変わる気配を見せている。
一般NISAと「つみたてNISA」は目的が違う
まずは、いま実施されているNISAをおさらいしよう。まず一般NISAは、年間120万円を上限に、株式・投資信託などの売却益や配当金などが、最長5年まで非課税(最大600万円)になる制度だ。2014年にスタートし、10年間限定で行われている。ジュニアNISA(16年開始)は、上限額が毎年80万円になる、18歳までは払い出しできないなどを除き、多くの部分が一般NISAに準じている。
一方、18年から始まった、つみたてNISAは、若干内容が異なる。長期、積み立て、分散投資を目的としていることから、株式は対象でなく、条件を満たした投資信託とETF(上場株主投資信託)に限られている。長く保有する目的から、非課税期間は最長20年間、上限は毎年40万円(最大800万円)となっている。
そんな両制度の行方に、いま注目が集まっている。19年11月26日、読売新聞が朝刊1面(東京14版)で「NISA一本化へ」と報じた。しかし、その夜には、共同通信などが「一本化見送り」と報道。そして28日になって、読売や朝日などの各社が、新たに一般NISAへ「積み立て型」を加える案を伝えた。いずれも政府・与党が「方針を固めた」との表現となっている。
現行の一般NISAは、23年末までのため、24年以降については未定だ。各社報道を見る限り、24年からは一般NISAが「従来型」「積み立て型」の2種となり、並行して「つみたてNISA」が継続されるようだ。積み立て型の詳細は、今後詰めるとされているが、将来的な一本化に向けたものとみられる。
両制度の存続を「強く要望」する業界団体
金融庁は20年度の税制改正に向け、時限措置であるNISAの恒久化を求めている。家計の「安定的な資産形成」を後押しする目的があり、恒久化の要望はここ数年出されている。積み立て投資に軸足を移すのも、同様の趣旨からだ。
現状の一般NISAは、積み立てなどによる長期投資だけでなく、デイトレードといった短期売買にも使えるため、安定した資産形成ができないのではといった指摘もある。一方で、つみたてNISAの普及は、まだ道半ばだ。19年9月に発表された、6月末時点の利用状況によると、一般NISAが約1162万、つみたてNISAが約147万口座だった。
与党は、つみたてNISA開始前の17年度税制改正大綱で、「複数の制度が並立するNISAの仕組みについて、少額からの積立・分散投資に適した制度への一本化を検討する」としていた。しかし、19年度のそれでは「その政策目的や制度の利用状況を踏まえ、望ましいあり方を検討する」といった表現に抑えられている。
そこへきての「一本化へ」「見送り」報道。すんなり行かない背景には、金融業界の意向もあるようだ。日本証券業協会の鈴木茂晴会長は、11月20日の記者会見で、一般NISAが若年層にも浸透しつつあるとして、「両方のNISA制度そのものの存続を強く要望している」(協会公式サイトの会見要旨より)と述べている。果たして、まもなく決定する大綱では、どのような表現になるのだろうか。
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)