「Occupy Wall Street(ウォール街を占拠せよ)」
しかし、トランプ支持者でキリスト教福音派のジョアン(60代、フロリダ州タンパ郊外在住)は、まったく違う捉え方をしている。
「映画は残酷で直視できない場面も多かったけれど、あのシーンでイエス・キリストの復活を連想したの。そしてそれが、トランプ氏と重なった。マスコミは彼を叩き、誰も勝利を信じなかったけれど、社会を転覆させた。大統領になってからも非難され続け、弾劾の危機にさらされながらも立ち上がり、社会から忘れ去られていた人たちを救った。彼の言動には賛成できないこともあるけれど、支持者にとってヒーローであることに変わりはない」
一方で、アーサーも群衆も「左派」という、まったく逆の見方もある。アーサーは市の財政難によって社会福祉プログラムを打ち切られ、カウンセリングを続けられなくなる。トランプ氏はアーサー側ではなく、ジョーカーに撃ち殺されるマーレイや、実業家で政界に打って出るトーマス・ウェインの側の人間だ。以前、テレビのトーク番組を持っており、実業家だったトランプ氏を思わせる。
街に繰り出す暴徒は、2011年9月17日にニューヨーク市ウォール街で始まった「Occupy Wall Street(ウォール街を占拠せよ)」と呼ばれる草の根の抗議デモと重なる。若者を中心とする参加者は公園に寝泊まりし、経済格差の解消を求めて富裕層への課税強化などを訴えた。
極左による反トランプのデモにも似ている。映画のなかで暴徒の一部は、反ファシズムのプラカードを掲げている。これは現実にアメリカ各地で行われる反トランプのデモで、私自身、何度も見かけた。