「桜を見る会」の名簿廃棄問題がくすぶる中で、菅義偉官房長官が7年前にブログなどで書いたことが、ネット上で話題になっている。
そこでは、東日本大震災に関連して「政府があらゆる記録残すのは当然」としていたからだ。現在の発言と整合性があるのかについて、様々な意見が出ている。
過去の会見でも、同様な本の記述があることを記者が追及
きっかけは、ツイッター上で2019年11月28日、菅官房長官の会見動画が投稿されたことらしい。
17年8月8日の会見では、加計学園問題について質疑応答があり、東京新聞の女性記者が厳しく菅氏に突っ込んだ。その後、朝日新聞の男性記者は、政府のワーキンググループ(WG)で学園側の発言を議事録に載せないのは、すべてをオープンにするという政府の方針を撤回したことになるのかとただした。
これに対し、菅氏は、そのことを否定し、WG座長が決めたことだと説明した。
すると、朝日の記者は、次のような質問を投げかけた。
「ある政治家は、『政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録ってのはその最も基本的な資料で、その作成を怠ったことは国民への背信行為だ』と。そういうこともおっしゃられているのですけれど、その発言をしていた本人、記されていたのはどなたか、官房長官ご存知ですか?」
菅氏は、少し不機嫌そうな顔になって、「知りません」と答えた。
これを受けて、朝日の記者は、「官房長官の著作に書かれているんですが」と指摘し、2012年に書かれた著作にあった見解に照らし合わせて、やはり記録を残すべきだと忸怩たる思いにはならないのかと問うた。その後、菅氏は、「私は残っていると思いますよ」として、その趣旨を説明していた。
動画の投稿には、2万件以上もの「いいね」が付いており、反響を呼んでいる。
ネットでは、菅氏の現在の立場に理解を示す声も
ツイッター上では、菅氏の会見で朝日の記者が紹介した本の記述と似た趣旨が、菅氏の2012年1月28日付ブログにあったとの報告もあった。
当日のブログを見ると、「議事録も作成しない『誤った政治主導』」のタイトルで、当時の民主党政権が、東日本大震災に対応するために開かれた多くの会議で議事録が作られていなかったとして、ずさんだと非難していた。国会事故調の検証にも支障が出ると指摘し、失敗を隠そうとしたと疑われるような密室政治で、政権を担う資格がないと断じている。その文中に、以下の表現があった。
「1000年に一度という大災害に対して、政府がどう考え、いかに対処したかを検証し、そこから教訓を得るために、政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録はその最も基本となる資料です。それを作成していなかったのは明らかな法律違反であるとともに、国民への背信行為です」(ブログから引用)
菅氏が過去に書いていたことについて、ネット上では、「良いこと言ってたのに。。」「記憶をシュレッダーにかけたか」といった皮肉の書き込みが相次いだ。野党も反応しており、共産党は19年11月29日、菅氏のブログをツイッターで取り上げ、「記録を残しておかなければ国会でも支障が出ます。ところで、これを書いたのは誰でしょうか?」と朝日の記者のような返しをしていた。
一方で、菅氏の現在の立場に理解を示す声もあり、「名簿なんて個人情報だろう。これを公表して晒されたらどうするの」といった書き込みもあった。また、野党が名簿問題への政府対応を理由に国会審議を一時拒否しようとしたと報じられ、「職務放棄と同じです」「議員報酬を返還すべき」とこの問題ばかり取り上げる姿勢に疑問や批判も出ていた。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)