アイドルグループ「モーニング娘。'19」などが在籍するハロー!プロジェクト(ハロプロ)は、今後開催予定のライブ・コンサートの一部で、スマートフォン・携帯電話による撮影を試験的に解禁すると2019年11月28日に発表した。
長らく撮影禁止が当たり前だったコンサート・ライブだが、昨今はSNSでの「体験の共有と拡散」を目的に、撮影解禁の動きが広がっている。ハロプロもこれに追随したとみなせるが、ファンは一様に歓迎、というわけではないようだ。
ハッシュタグ付きでのSNS共有を推奨
ハロプロは11月28日に公式サイト上の「NEWS」で、「ライブを楽しんでいただいている皆さんの思い出作りの一つとして、以下の公演で、スマートフォン・携帯電話でのみ、試験的に写真撮影を許可することといたします」と告知した。
対象公演は19年12月に開催する「Juice=Juice」とモーニング娘。'19の単独ライブ(いずれも国立代々木競技場第一体育館)、「アンジュルム」の2019年夏秋ライブツアーファイナル公演(豊洲PIT)、「カントリー・ガールズ」のLINE CUBE SHIBUYA(東京都渋谷区)での単独ライブ、ハロプロアイドルが多数出演する19年大晦日の「Hello! Project COUNTDOWN PARTY 2019 ~GOOD BYE & HELLO!~」(中野サンプラザ)の5公演である。
試験的に解禁した写真撮影は、個人がスマホ・携帯電話でのみ可能(タブレットは不可)で、動画撮影・録音・一眼レフなどのカメラによる撮影・フラッシュ撮影は今まで通り禁じられ、営利目的の撮影も禁止のまま。一方でお知らせには「SNSなどに共有する際は、設定したハッシュタグをつけてアップしていただければと思います」という文面があり、グループ名のタグとともにSNSでの共有を推奨している。
あゆ、AKB、イコラブ...グループによって対応割れる
スマホによる撮影性能の向上とSNSの浸透に伴い、撮影OKとするアーティストやアイドルグループは徐々に増えている。浜崎あゆみさんは2016年頃から撮影OKのライブを始め、既に恒例となっている。当初は一部時間帯だけが撮影可能だったがレギュレーションを緩め、19年4月のさいたまスーパーアリーナ公演などでは開演から終演までスマホ・携帯電話により撮影可能になっている。
アイドルグループではAKB48とその姉妹グループは、コンサートによっては「撮影可能タイム」を設け、動画の撮影も可能。花道の至近距離で観客に「個別レス」を振りまくメンバーの様子も動画投稿サイトにアップされている。いずれもライブという「体験」を気軽に記録して共有、消費ができる習慣だ。日常の小さな体験でも記録しネットで共有できる、SNS社会のトレンドを反映しつあるだろうか。
元HKT48劇場支配人でタレントの指原莉乃さんがプロデュースするアイドルグループの「=LOVE」(イコールラブ、通称イコラブ)は、さらに大胆なレギュレーションを設けている。デジタル一眼レフなど本格的なカメラでの撮影ができる通称「カメコ席」が設けられ、プロ顔負けの美しい瞬間を捉えた写真がツィッターなどネット上に投稿される。逆にスマホ・携帯電話での撮影は不可能だ。これらの写真はファンだけでなくアイドル本人も共有して積極的に拡散されていて、アイドルのベストショットを大々的に共有し、イコラブを知らないネットユーザーへの拡散効果もあるという野心的な戦略がとられている。他のアイドルグループのイベントでも、初披露の新曲が歌われる時等に限って撮影OKとし、SNSへの投稿を呼び掛けるケースが散見される。
「卒コン」を台無しにしないで、と危惧も
ハロプロの撮影解禁もこのような傾向に沿ったものと思われるが、ファンの方は賛同一辺倒ではなく戸惑い気味だ。というのは、対象公演の中にファンにとって大切な「卒コン(卒業コンサート)」が含まれているためだ。12月10日のアンジュルムの豊洲PIT公演は中西香菜さんの卒業公演にあたり、カントリー・ガールズは12月26日の公演をもってグループの活動休止が発表されている。ゆえに
「なぜ卒コンまでも解禁するのか?」
「卒業コンサートセレモニーでシャッター音が響くとかなり興ざめになります」
「思い出が雑音に紛れちゃう悲しさ想像できんのか」
「推しの卒コンで『試験的に...』なんて言われるのは嫌」
など、ライブの雰囲気を台無しにされたくないというファンの意見も多い。最後のステージを思い出として焼き付けたいファンは、スマホで視界が隠されたり、シャッター音に雰囲気が乱されたりするのを危惧している様子だ。
前出の浜崎さんのステージを観たことがあるJ-CASTニュース記者によれば、観客の多くがスマホなどで写真を撮っていたものの、シャッター音はアッパーな曲が多かったせいもあり、演奏にかき消されてほとんど気にならなかった、と語っている。ハロプロ側も解禁したとはいえ、静かな曲での撮影や腕を高く上げての撮影行為など、演出や周囲の観客の迷惑になる行為は控えるよう呼び掛けている。
ハロプロの12月の公演での解禁はあくまで試験的なもので、「撮影許可の経過・動向を見つつ、公演に混乱をきたすようであれば、2020年の撮影の実施を見送る場合もあります。ひとまず年内のトライアルとさせていただきます」とも告知している。前出のイコラブや浜崎さんのケースも含め、撮影を認めるかどうかのルールはファンの良識と、運営と観客の信頼関係により形成されて行く。ハロプロではどのようなルール・マナーになるか、今後会場などでファンが見せる態度に左右されるだろう。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)