北朝鮮が2019年11月28日に発射した弾道ミサイルをめぐり、北朝鮮の国営メディアは翌11月29日、「超大型ロケット砲の試射」を行ったと報じた。北朝鮮による弾道ミサイル発射は10月30日以来、約1か月ぶり。19年に入ってからは13回目だ。
10月30日のミサイル発射の際には金正恩・朝鮮労働党委員長の姿は報じられなかったが、今回の発射には正恩氏が立ち会った。非核化をめぐる米朝の協議が難航するなか、北朝鮮は対話の期限を「今年の末」だと主張している。さらに、韓国は11月22日、日本との軍事情報包括保護協定(GSOIMA)の継続を決めている。こういった動きが影響している可能性もある。
連射性能向上、実戦配備加速?
防衛省の発表によると、今回は北朝鮮東岸から2発が発射され、それぞれの高度は、約100キロ、飛行距離は380キロ。これに対して10月31日には北朝鮮西部から2発が発射され、高度は100キロ、飛行距離は350~400キロと推定されており、近い性能の弾道ミサイルが発射されたとみられる。
北朝鮮側の報道では、いずれも発射されたのは「超大型ロケット砲」。10月には「連続射撃システムの安全性を検証」することが目的で、正恩氏は報告を受けて「満足の意」を示したという。それに対して今回の発射の目的は「戦闘適用性を最終的に検討すること」で、発射に立ち会った正恩氏は「大満足の意を表した」という。連射性能などが向上し、実戦配備に向けた動きが加速する可能性もある。
米朝実務者協議決裂で対話の期限は「今年の末まで」
米朝は19年10月にスウェーデンのストックホルム近郊で実務者協議を行ったが決裂。直後の10月6日に北朝鮮外務省は
「われわれが、問題解決の方途を米国側に明白に提示した以上、今後朝米対話の運命は米国の態度にかかっており、その時限は今年の末までである」
などとする声明を発表していた。今回のミサイル発射を報じる北朝鮮側の報道には日韓米への批判は登場しないが、米朝協議が前進しない上、韓国が一転してGSOMIA継続を決めたことに反発した可能性もある。
北朝鮮はたびたびGSOMIA破棄を主張しており、北朝鮮の宣伝機関「祖国平和統一委員会」が運営するウェブサイト「わが民族同士」が11月29日付で掲載した記事で、「民族の尊厳と利益を外勢に売り込む容認できない反民族的犯罪」などと継続を非難し、「外勢屈従は恥辱と破滅の道である」だと主張している。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)