ぺんてるの海外販売拠点に魅力
コクヨがぺんてるを取り込もうとしている理由は、潜在力がある海外事業が魅力だからだ。それを象徴する商品が、ロングセラーの「サインペン」だろう。筆屋をルーツとするぺんてるが筆のように書きやすく、ボールペンのように持ち運びやすい筆記具として1963年に開発したが、当初はさっぱり売れなかった。何とか販路を開拓できないかと考え、米シカゴで開かれた文具の国際見本市で試供品として配ったところ、たまたま大統領報道官の手に渡り、それを借りて使ったジョンソン大統領(在任:1963~69年)が気に入って、サインペンを大量に注文した。この逸話が雑誌などで伝えられると、ぺんてるのサインペンは全米で有名となり、人気に火が付いた。さらに米国の宇宙船ジェミニの宇宙飛行士が無重力の船内で使ったこともあり、評判が逆輸入された日本でもヒット商品に。ぺんてるは、これで文具メーカーとしての礎を築いた。
ぺんてるは現在、欧米やアジアなど海外約20カ所に販売拠点を抱え、売上高に占める海外の比率は6割に達しているという。海外比率が1割程度しかないコクヨにとって、自社の弱点を補うには絶好の買収先だ。しかし、ぺんてるはこうした強引なコクヨの手法への反発は強く、コクヨのシナリオ通りに進むとは限らない。