萩生田光一文部科学相が2019年11月27日、衆院文部科学委員会で発言した「夏の甲子園」に関する内容について、さまざまな波紋が広がっている。
萩生田氏は「アスリートファーストの観点で言えば、甲子園での夏の大会は無理だと思う」とコメント。令和2年には102回目を迎える「夏の風物詩」が、大きな岐路に立っている。
投球制限など議論に拍車
昨今の高校野球では「投手の連投」や「酷暑内での試合の在り方」などについて議論がなされてきた。2018年12月には、新潟県高校野球連盟(高野連)が、「球数が100球に達した投手は、以降の回で投球できない『球数制限』を導入する」と決定したことなどから、この議論には、さらに拍車がかかっている状況だ。
実際、今夏のNo.1投手と言われた佐々木朗希投手(岩手県大船渡高)も県予選での連投で、國保陽平監督から登板回避を言い渡された。結果、大船渡高は、甲子園に出場できなかった...といった事態も起こっている。監督の判断については「投げさせるべきだった」という意見と、「選手の将来を考え、登板を回避させたことは英断だった」という意見が真っ二つ。果たして、どうすべきだったのかは、結論が出ない。
記者は、元ラガーマンで高校野球の経験はないが、どちらの言い分も理解できる。ラグビーの場合、野球よりもコンタクトプレーが多い分だけ、ケガも多い。仮に、もし自分がトップリーグ(TL)や日本代表を狙える位置にいた場合は「試合に出ない」という選択をしたかもしれないし、「学生ラグビーで燃え尽きるレベルでしかない」と決めたのならば「ケガを推してでも試合に出る」という、究極の選択に迫られたであろう。
「名」を取るのか「実」を取るのか。17~18歳の少年には、あまりにも酷なチョイスだったに違いない。
高野連「情報を共有している段階。コメントできる状況にない」
日本高野連によると「情報(萩生田文科相の発言)を共有している段階で、コメントできる状況にはない。(11月)29日に定例の理事会が行われるが、20日に行われた有識者会議での答申、そのほか議論すべき課題がたくさんある。その話(萩生田文科相の発言)には言及しない」とした。
高校野球の名門である横浜高(神奈川)野球部OBで、主将を務めた50代の男性にも話を聞くことができた。甲子園出場経験もある同氏は、
「誰のための高校野球なのか...ということを考えてほしい。真夏の甲子園で輝くことを目標にして、強豪校を選ぶ選手にとっては『夏の甲子園を目指して輝いて、何が悪いんですか?』という話だし、逆に『高校では甲子園に出られなくても、将来、社会人やプロで』と思う子どもたちもいる。要は、複数の選択肢の中から『自身で選んでいる』だけにすぎない。それを、周囲の大人が、先のことばかり考えて、外野からとやかく言うのは...どうかと」
(J-CASTニュース編集部 山田大介)