アメリカンイーグル撤退を支え切れるか 青山商事「本業」スーツの厳しい先行き

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   「洋服の青山」を展開する紳士服大手、青山商事の株価が10営業日連続で下落し、2013年1月以来、約6年10カ月ぶりの安値をつけた。

   2019年11月8日に発表した2020年3月期の業績予想で純損益が創業以来初の赤字に転落すると見込んだことで売りが優勢となっている。主力の男性用スーツが商品として曲がり角に立っていることも背景にある。

  • アメリカンイーグルの全閉店が発表された(公式サイトより)
    アメリカンイーグルの全閉店が発表された(公式サイトより)
  • アメリカンイーグルの全閉店が発表された(公式サイトより)

主因は「アメリカンイーグル」撤退だが

   まずは8日の発表内容を確認しておこう。2020年3月期連結決算の業績予想を下方修正した。売上高については従来予想より98億円減額し、前期比5.9%減の2355億円。営業利益は従来予想より23億円減らし、前期比38.5%減の90億円、純損益は従来予想の30億円の黒字が一転して20億円の赤字へ転落する見通しを示した。

   赤字転落の主因は、米国発のカジュアルウエア「アメリカンイーグル」事業を整理することにより、69億円の損失が発生することで、一時的なものではある。連結子会社「イーグルリテイリング」は2019年末で事業を終了。売却予定だった一部店舗の売却が見込めなくなったことで損失が膨らんだとしている。なお、25日には全店閉鎖も発表された。

   しかも主力のビジネスウエア事業が振るわず、損失をカバーしきれない。その点を投資家が厳しく見ているようだ。今回の下方修正においても、その要因として「ビジネスウェア事業やカジュアル事業の業績が前回予想を大幅に下回る」ことを挙げている。青山商事の2019年9月中間連結決算によると、ビジネスウエア事業の既存店売上高は前年同期比5.3%減と2018年9月中間期の4.0%減、2017年9月中間期の1.9%減を下回る下落率を記録した。

カジュアル事業やネット展開で活路拓けるか

   直近の月次のビジネスウエア事業の既存店売上高も厳しい。8月に今年3月以来、5カ月ぶりの前年同月比プラスを記録したが、プラスとはいえわずか0.2%。低温続きだった7月に比べて気温が上昇し、クールビズ商品の需要が増えたためで、客単価下落率は7月(4.6%減)より低い8.3%減だった。9月は消費税率引き上げを控えた駆け込み需要で既存店売上高は3.0%増だったものの、10月はその反動減もあって27.9%減と深い谷を刻んだ。

   こうした傾向を裏付けるように、メンズスーツの販売着数は2017年9月中間期75.6万着、2018年9月中間期71万着、2019年9月中間期65.2万着と右肩下がりになっている。青山商事としては、メンズスーツが従来のようには売れない要因の一つを「オフィスウェアのさらなるカジュアル化などによる市場環境の変化」ととらえている。そもそも生産年齢人口が減っていることに加えて、IT関連企業など普段からスーツを着用しない会社が増え、また、従来型企業にあってもカジュアル化は確かに進んでいる。

   株価は敏感に反応し、11月8日の下方修正発表の翌営業日11日の株式市場で一時、前週末終値比3.4%(66円)安の1885円をつけた。当日高値が前営業日安値を下回る「窓を開ける」節目のチャート図を描いた。この11日から22日まで10日続落し、10日間の下げは17%(333円)を記録した。その後はやや回復しているものの、27日時点でも1600円台を脱出できていない。

   ただ、アメリカンイーグル事業の損失処理がなければ赤字転落はなかったとみられる。消費税率引き上げの谷を越えた先に、カジュアル事業やネット事業などでいかに効果的な次の一手を打てるかを市場が注視している。

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