2020年東京五輪で時給1600円の派遣の仕事などが求人情報誌にあったことについて、大会ボランティアとどう違うのかと、ネット上で話題になっている。
もし同じ作業内容なら不公平ではないかとの声もあり、大会組織委員会に実際のところを取材した。
求人情報誌で大会スタッフ募集して話題に
競技会場での案内などを行う大会ボランティアは、応募者が約20万人と2倍以上の倍率になり、その中から約8万人が選ばれた。会場周辺や駅などで案内する都市ボランティアを含めると、約11万人が期間中を中心に活動する予定だ。
ただ、自分の意思とは関係なく応募させられている人もいるのではとの疑問がネット上でも出ており、一部では学校ごとの割り振りもあったと報じられている。また、作業に見合った報酬が支払われないことへの疑問や批判もあるようだ。
そんな中で、2019年11月26日ごろに、人材派遣会社などが時給1600円以上などとうたって競技会場などで仕事をするスタッフを募集しているとツイッター上で話題になった。
リクルートジョブズ発行のフリーペーパー「タウンワーク」の都内地域版11月25日号では、五輪を支える仕事の巻頭特集が組まれ、7つほどの求人広告が出ている。
うち1ページを割いた大きな広告では、ボランティアと関係がありそうだとされた2社があった。五輪スポンサーになっている派遣大手のパソナは、大会組織委に派遣され、競技会場運営などで働くスタッフを募集している。20年2~9月まで1~8か月間働く内容で、時給は1600円以上となっている。
また、引っ越し事業などをしているヤマトホームコンビニエンスは、選手宿泊施設などでの荷物搬入・搬出を行うスタッフの募集だった。20年1月からの期間中に週3~5日間働くとし、時給1600円以上、交通費全額支給をうたっている。ヤマトも五輪スポンサーだ。
「役割を自主的にやっており、不公平ということはない」
ツイッター上では、こうした求人広告についてボランティアから「同じ仕事なのになぜ?」との声も出ているとの投稿が紹介され、反響を集めた。3万件ぐらいリツイートされ、様々な意見が寄せられている。
「無償ボランティアと有給バイトが一緒に働くのか」「ボランティアなんてバカみたいじゃないですか」といった疑問や批判が寄せられる一方、「あるべき形になった」「最初から対価を払ってれば良かったものを」との声もあった。
しかし、派遣などの仕事は、ボランティアがする作業とは責任の異なる別の仕事ではないかと冷静に見る向きもあり、ボランティアの統括をするのではといった見方も出ていた。
大会組織委の広報担当者は11月27日、ヤマト案件については、大会スタッフではなく、ボランティアも同じ作業をしないとし、パソナ案件については、大会スタッフとして職員やボランティアと一緒に仕事をするとJ-CASTニュースの取材に説明した。
ボランティアは、大会期間中に業務のサポートを行い、日数や時間も本人の自由意思で決められると言う。これに対し、パソナの派遣スタッフは、所定の勤務条件で働く労務だとし、働く日数や時間も違うと説明した。
しかし、「大会運営に関わる役割は一緒です」として、ボランティアと派遣スタッフの作業が重なっていることを認めた。派遣スタッフは、ボランティアの統括もしないという。
不公平ではないのかとの指摘については、「ボランティアの方は、役割を自主的にやっておられますので、そうしたことはないですね。すごく意欲的に、一生に一度のことだとポジティブに研修に臨んでおられます」と否定した。
職員やボランティア以外のスタッフはパソナだけだとし、その理由として、人材派遣会社のオフィシャルパートナーは他にないことを挙げた。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)