タイの英雄ウィラポンは西岡、長谷川と死闘
1992年9月17日、WBC世界バンタム級の王座統一戦が行われた。正規王者・辰吉に対して暫定王者ラバナレスは旺盛なファイティングスピリッツで攻め込んだ。打たれ強さに加え、フック、アッパーを織り交ぜた独特のファイトスタイルで辰吉に襲い掛かり、結果は辰吉の9回TKO負け。プロキャリアで初の黒星となった。
翌1993年7月22日に辰吉は再びラバナレスと拳を交える。正規王者・辺丁一(韓国)の手の骨折によって設けられた暫定王座を争うタイトル戦で、フルラウンドにわたる激しい打ち合いの末、僅差の判定で辰吉が雪辱を果たした。また、辰吉はウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)とも2度にわたる死闘を演じ、これもまた伝説的な試合として語り継がれている。
辰吉から王座を奪ったウィラポンにまつわる世界戦といえば、西岡利晃と長谷川穂積の2人が挙げられる。西岡は王者ウィラポンに4度挑戦し、2敗2分けの成績だった。初戦を判定で落とし、第2戦、第3戦はともに1-1のドロー。そして迎えた第4戦でもウィラポンの牙城を崩すことは出来なかった。西岡はのちに階級をひとつ上げ、スーパーバンタム級で王座を獲得し、7度の防衛に成功した。
西岡がどうしても勝てなかったウィラポンから王座を奪ったのが長谷川だ。2005年4月16日、長谷川はウィラポンの15人目の挑戦者としてリングに上がった。6年以上の長期にわたって王座を保持してきたタイの英雄に対して、世界初挑戦の長谷川は臆することなく攻めた。世界的な名王者に一歩も引かず壮絶な打ち合いの末、王座を奪取。新時代の幕開けとなった。