ローマ・カトリックのフランシスコ教皇は、2019年11月23日から26日に日本を訪問した。
広島・長崎・東京を公式訪問した教皇来日だったが、これに合わせて日本に入国しようとした韓国人被爆者の一部が、福岡空港での入国審査で長時間足止めされる事態が起きていたことがわかった。
教皇ミサのため来日も、5時間にわたる入国審査
足止めされたのは韓国の被爆者団体の「韓国原爆被害者協会」のメンバー。11月24日に被爆地長崎で行われる教皇のミサに出席するため、23日の11時頃に福岡空港に到着したが、十数名のメンバーのうち被爆者4人について入国審査官が口頭審理の必要があるとして、長時間入国審査のため「足止め」され、約5時間の審査の末に全員の入国が許可された。一行は23日のホテル到着が大幅に遅れたものの、翌24日の長崎でのミサには参加できた。これが被爆者団体の支援者らによりツイッターなどで拡散され、入管の対応を非難する意見も上がっている。
当日、現場で入管への抗議を行った後藤富和弁護士(福岡県・大橋法律事務所)に、J-CASTニュースは26日話を聞いた。後藤弁護士によれば、係官に一部の被爆者にのみ詳しく審査を行う具体的な理由を求めたところ、「教皇来日に伴う警戒強化」「メンバーが観光目的で長崎に行くと答えたため、詳しく話を聞く必要があると判断した」ことなどを理由に挙げた。長時間の審査を受けた4人はいずれも70~80代とみられる高齢者だったという。 しかし、観光目的で長崎に向かう外国人は多く居り、彼らだけに長時間尋問を行うのも不自然であり、さらに納得のいく説明を求めるもそれ以上の説明はなかったと後藤弁護士は語った。また審査が長時間に及んだ理由は、東京の入国管理局本庁に電話で指示を仰ぐ必要があったことと、韓国語を話せる担当者が1人しかいなかったためと説明を受けたという。
入管「個別の事例には答えられない」
11月26日に福岡入国管理局にこの事件について取材を行うと、福岡入管総務課の担当者は23日に一部の被爆者へ長時間入国審査を行ったことを認めた。一方、被爆者のグループの中でも一部のメンバーだけが長時間審査を受けた理由等については「個別の事例には答えられない」と回答を避けながらも、「観光目的の入国であっても、日本国内での滞在内容によっては口頭で詳細に話を聞くことはあり得るので、今回はそのケースに該当したと考えられます」と答えた。入管本庁に電話で指示を仰いでいた件については「上の部局の指示を仰ぎ、また情報共有のために本庁と連絡をとるケースもあり得るもので、今回は東京と連絡を取る必要があったとみられます」と答えている。
本件は韓国国内でも、キリスト教系のニュースを配信している「カトリックニュース・ライト・ヒア」というウェブメディアにより11月25日に報道されていた。記事によれば、当該の被爆者グループは日本カトリック長崎教区によりミサに招待されていた。 同記事ではまた、一部の被爆者だけが足止めされたのは過去の訪日時に入管の「ブラックリスト」に記録されていたせいではないか、と憶測している箇所もあったが、J-CASTニュースの取材の限りでは入国審査の際にどのような質問がなされたかや、「ブラックリスト」の有無については入管からの回答は得られていない。