ホームドア設置工事に潜む危険 思わぬ「死角」で死亡事故も

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   人身事故防止のため、鉄道各社で駅へのホームドア設置が進んでいる。しかし、設置工事の間のわずかな「死角」が事故への引き金になるおそれがある。

   2019年11月22日深夜1時頃、京急本線上大岡駅(横浜市港南区)で、男性が発車する列車とホームドアの間に巻き込まれ、死亡する事故が発生した。上大岡駅はホームドア設置工事中だったが、ドアそのものは未稼働の状態で、列車との接触を防ぐことはできなかった。本格稼働前のホームドアは決して安全でなく、むしろ余分な死角をつくる恐れがあり、工事中は安全対策が不可欠なほどだ。

  • 安全性が格段に増すホームドアだが、稼働までの「死角」は人命にかかわる(写真は京急蒲田駅に設置済のホームドア(プレスリリースより))
    安全性が格段に増すホームドアだが、稼働までの「死角」は人命にかかわる(写真は京急蒲田駅に設置済のホームドア(プレスリリースより))
  • 安全性が格段に増すホームドアだが、稼働までの「死角」は人命にかかわる(写真は京急蒲田駅に設置済のホームドア(プレスリリースより))

ドア部分の稼働前は、死角が増える

   駅でのホームドア設置は、通常戸袋部分にあたる「筐体(きょうたい)」をホームに設置し、その後開閉するドア部分が稼働するプロセスで進む。したがって工事期間中には、ホームに筐体が置かれるだけで、ドアは開閉せず開口部が放置される時期がある。事故が起きた京急上大岡駅でも9月には筐体が設置され始めていたが、ホームドアの稼働は11月30日から(1・2番線のみ)の予定だった。この約2か月間、ホームに筐体があるといってもそれはただの「壁」でしかなく、本来のホームドアの機能とは程遠い。

   ホームドアは乗客の挟み込みや、列車とドアの間に乗客が取り残されたのを感知するセンサーも備えて安全を確保しているが、ドア稼働前はこれらのセンサーも未稼働。車掌側から見ると、ホームドア筐体の設置で見えない「死角」が増え、閉扉時の挟み込み等を見落とす恐れがある。しかもホーム側のドア部分は開いたままなので転落や接触の恐れがあることは筐体設置前と変わらない。筐体による死角がある分、設置前より危険ともいえる。

   ホームドア設置工事中の乗客の安全のために、鉄道会社ではホーム上の警備員や駅係員を増員して監視を強化するのが一般的だ。ホームドアの脇に立って安全確認している警備員の姿を覚えている人も多いのではないだろうか。

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