東京大学大学院情報学環・学際情報学府特任准教授で、AI開発などを行う「Daisy」代表取締役の大澤昇平氏がツイッター上で、自分の会社では「中国人は採用しません」などと発言したことを受け、ネット上で「人種差別」といった批判が集まり、波紋を広げている。
同氏は同大大学院の寄付講座で講師も務めている。講座に寄付する企業の中には「本特任准教授の価値観は到底受け入れられるものではなく、書き込みの内容及び現在の状況に関して、極めて遺憾」とした上で、「本講座に対する寄付は速やかに停止する方針」を示すところもあった。
東大大学院「あらゆる形態の差別や不寛容を許さず、すべての人に開かれた組織であることを保障いたします」
発端は、2019年11月20日11時10分ごろのツイート。「弊社 Daisy では中国人は採用しません」と投稿している。大澤氏は続けて、13時20分ごろ、「中国人のパフォーマンス低いので営利企業じゃ使えないっすね」と投稿。同日14時ごろには「そもそも中国人って時点で面接に呼びません。書類で落とします」と発言した。
発端となったツイートなどをめぐり、ネット上では
「どストレートな人種差別」
「とてつもない『差別主義者』ですね」
「ガチのレイシストじゃん」
「国籍差別」
「極めて遺憾」
といった声が上がっていた。
准教授による複数の書き込みを受け、東京大学大学院情報学環・学際情報学府は11月24日、ウェブサイト上で越塚登・学府長の見解を発表した。
「SNS等におきまして、東京大学大学院情報学環・学際情報学府(以下、学環・学府)の特定短時間勤務有期雇用教職員(特任准教授)による、特定個人及び特定の国やその国の人々に関する不適切な書き込みが複数なされました。これらの書き込みは、当該教員個人または兼務先組織に関するものであり、学環・学府の活動とは一切関係がありません。
東京大学憲章では、『東京大学は、構成員の多様性が本質的に重要な意味をもつことを認識し、すべての構成員が国籍、性別、年齢、言語、宗教、政治上その他の意見、出身、財産、門地その他の地位、婚姻上の地位、家庭における地位、障害、疾患、経歴等の事由によって差別されることのないことを保障し、広く大学の活動に参画する機会をもつことができるように努める』と言明しております。
学環・学府は、この理念に則り、国籍はもとより、あらゆる形態の差別や不寛容を許さず、すべての人に開かれた組織であることを保障いたします。学環・学府構成員から、こうした書き込みがなされたことをたいへん遺憾に思い、またそれにより不快に感じられた皆様に深くお詫び申し上げます」(日本語版全文)
ウェブサイト上の「見解」では、大澤氏の名指しはしなかったものの、J-CASTニュースが25日、大学院関係者に取材したところによると、「特任准教授」というのは大澤氏のことだという。
寄付講座関連企業も相次いで「寄付は速やかに停止」の方針
大澤氏による書き込みの波紋は、関連企業へも広がっている。
大澤氏が講師を務める、情報学環の「情報経済AIソリューション寄付講座」に出資するマネックスグループは11月24日、「寄付講座担当特任准教授の不適切な書き込みに関する見解」と題したリリースをウェブサイト上に発表した。
オンライン証券や仮想通貨交換業を営む同社は、「この度、本講座の担当特任准教授(以下「本特任准教授」)が、SNS 等で特定個人及び特定の国やその国の人々に関する不適切な書き込みを複数展開したことを受け、本講座に寄付をする当社グループに対する言及もいくつか行われております」と指摘。「元来ダイバーシティを尊重する企業であり、また、持続可能な経営を進めて行くため、人権の尊重を事業活動における重要課題として認識し、人権の尊重の更なる実践に向けて『マネックスグループ人権方針』を制定しております』と自社の方針に言及した。「当社としては、本特任准教授の価値観は到底受け入れられるものではなく、書き込みの内容及び現在の状況に関して、極めて遺憾であります」とし、「今後、本特任准教授の本講座に対する寄付は速やかに停止する方針です」と今後の方向性を示した。
同社の広報を担当する加藤明子コーポレートコミュニケーション室長は25日、J-CASTニュースの電話取材に対し、「今回の寄付講座は、AIブロックチェーン人材の育成を目的としていて、(受講者は)講座の継続有無や可否を気に留めています。これから未来のある人材の皆さまに影響が最小限に済むようにしていただけたら」と話していた。
同じく同講座に寄付をしている、オークション相場検索サイト運営などを手掛ける「オークファン」も25日、「当社は今後本講座に対する寄付は速やかに停止する方針です」との見解を示した。同社は、「この度の本特任准教授による特定の個人及び特定の国やその国の人々に対する不適切な書き込みは、当社の経営方針とは著しく乖離しており、到底容認できるものではありません」と強く非難。「当社はSDGs(編注:持続可能な開発目標)達成を含め持続可能な社会の実現に向けた事業を運営しております。基本的人権の尊重の上に成り立つグローバルなパートナーシップは当社の事業にとって不可欠であり、今後も積極 的に推進してまいります。当社としては、たとえ個人的なものであったにせよ、本特任准教授の価値観は到底受け入れられるものではなく、極めて遺憾であります」としていた。
出資元企業も「いかなる差別にも断固反対する立場」
大澤氏が代表を務める会社「Daisy」に出資するリミックスポイントも25日、「当社出資先の代表者によるSNS等への投稿に対する見解」と題したお知らせ文を発表した。
同社は「当社の出資先企業の代表者が、SNS等において、特定の個人、特定の国やその国の人々に関する不適切な内容の投稿を複数回行いました。当該投稿は、かかる代表者個人によるものであり、当社グループの活動とは一切関係ございません」とことわった上で、「当社グループでは、グローバルに展開している事業を有し、かつ、国籍の異なる多様な人財が従業員・パートナーとして活躍しており、当該投稿は当社グループのビジョン・見解とは反するものと考えております」と主張。「当社は当該出資先企業に対してあくまでマイノリティ出資をしているにとどまりますが、今回の件に関しては、改めて代表者から意見を聴取し、事情を調査・確認したうえで、当社としての対応を図ってまいりたいと考えております」と見解を示した。
また同社は、「いかなる差別にも断固反対する立場をとっております。今回の当社の出資先企業代表者による投稿の内容は誠に遺憾であり、また、一連の投稿で不快に感じられた方々に深くお詫び申し上げます」と謝罪した。同社にも25日、電話取材を試みたが、担当者は「終日外出している」とのことだった。
J-CASTニュースでは25日昼ごろ、Daisyの広報担当者を通じて、大澤氏への取材を申し込んだ。ツイッターで書き込んだ「弊社 Daisy では中国人は採用しません」、「中国人のパフォーマンス低いので営利企業じゃ使えないっすね」、「そもそも中国人って時点で面接に呼びません。書類で落とします」などのツイートや、書き込みの削除や発言の撤回の意向があるかなどを質問したが、回答期日の25日19時までに返事はなかった。
(J-CASTニュース編集部 田中美知生)