ローマ・カトリック教会のトップ、フランシスコ教皇によるミサが2019年11月25日、東京都文京区の東京ドームで行われ、5万人(主催者発表)が参列した。
被爆地の長崎と広島では主に核廃絶を訴えてきた教皇だが、東京では日本の格差や貧困問題を念頭に、若者が「過剰な要求や、平和と安定を奪う数々の不安によって打ちのめされている」などと訴えた。
日の丸やバチカン国旗で出迎える
教皇の訪日は1981年2月の故ヨハネ・パウロ2世以来、約38年ぶり2回目。1981年の大規模ミサは、後楽園球場で行われ、約3万6000人が参列。その後球場は建て替えられ、1988年に東京ドームがオープンした。
教皇は19年11月23日に来日。24日は長崎と広島、25日に東京都内で行事に参加した。教皇が「パパモービレ」と呼ばれるオープンカーに乗って東京ドームのグラウンドに登場すると、参列者からは大きな歓声が起き、日の丸やバチカンの国旗を振って教皇を出迎えた。
教皇はミサの説教で、ドームのミサに先立って参加した東京カテドラル聖マリア大聖堂(東京都文京区)での「青年との集い」での出来事に言及。「日本は経済的には高度に発展した社会」だとする一方で、日本社会の現状について
「社会的に孤立している人が決して少なくなく、いのちの意味が分からず、自分の存在の意味を見いだせず、社会からはみ出していると感じている。家庭、学校、共同体は、一人ひとりが支えを見いだし、また、他者を支える場であるべきなのに、利益と効率を追求する過剰な競争意識によって、ますます傷ついている。多くの人が、当惑し不安を感じている。過剰な要求や、平和と安定を奪う数々の不安によって打ちのめされている」
と指摘した上で、「明日のことまで思い悩むな」(マタイによる福音書)という聖書の一節を引用しながら、
「より広い意味のある展望に心を開き、そこに自分にとってもっとも大切なことを見付け、主と同じ方向に目を向けるための余地を作るようにという励ましなのだ」
などと訴えた。
訪日前にも「過度な競争、消費をずっと続けること」指摘していた
教皇は17年12月にローマと東京・上智大学をビデオ会議で結んで行われた高校生との対話イベントで、日本人の国民性について
「理想を持った国民、非常に深い能力を持った国民。これは宗教的にもだ。そして非常に勤勉な国民だ。それから、非常に多く苦しんだ国民」とする一方で、日本が抱える問題として「過度な競争、消費をずっと続けること」を挙げ、これが続けば「自分が持っている力を失わせることになり、大きな問題になる」と指摘していた。
教皇は貧困問題に高い関心を持つことで知られており、訪日直前の11月17日には、バチカンに約1500人の貧困者やホームレスを招いたばかりだ。
教皇は11月26日に上智大学で講演し、日本を離れる予定だ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)