野球のアジアウインターリーグが2019年11月23日、台湾で開幕し、味全が韓国選抜に5-4で勝利した。元ソフトバンクの川崎宗則(38)が味全の3番指名打者としてスタメン出場。この日は1打席のみの出場となったがチームの勝利に貢献した。今年7月にコーチ兼選手として味全に入団した川崎が、チームに何をもたらしたのか。台湾球界に通じるNPB関係者に話を聞いた。
体調は「75%回復している」
川崎が所属する味全は今年6月に20年ぶりに台湾リーグに復帰した。味全は今シーズン、公式戦には出場せず、来シーズンは台湾の2軍で構成されるリーグ戦に出場する。1軍の公式戦に本格参戦するのは2021年シーズンからで、台湾・新竹市に新球場の建設を予定しており、21年に完工予定だという。
体調不良により昨年3月にソフトバンクを退団した川崎の味全入団が発表されたのは今年7月のこと。コーチ兼任の立場ではあるものの、球団は現役選手としての活躍を期待しており、7月中旬に台北市で行われたファンミーティングの席上で川崎は、体調に関して「75%回復している」と、プレーヤーとしての自信をのぞかせた。
台湾球界に通じる関係者によると、現在の台湾球界の指導法がMLB流に傾いているという。以前は日本球界から多くの指導者が台湾に渡り、西武の渡辺久信GM(54)もまた選手兼コーチとして台湾球界で活躍したひとり。近年はこのような流れが変わりつつあり、MLBから打撃、投手コーチを招へいするチームが増えているという。
MLB指導者が増える理由
現在、台湾にはプロ球団が5チームある。学生などのアマチュア選手がプロを目指すことになるが、最近は若いトップアマがMLBに流出する傾向にあるという。そしてMLBでメジャー入りを果たせなかった選手が台湾球界に戻ってくるケースが増えており、そのほとんどが英語を話す。MLB流の指導を受けた若手の能力をより伸ばすという理由で、MLBの指導者が台湾の球団に招かれるようになったという。
前出の関係者は、川崎が台湾球界で歓迎される理由を3つ上げた。
「まず1つに、日本スーパースターが台湾の球団に入るということは、そのチームの権威も上がります。久々に球界に復帰した味全にとってはかなりのインパクト、効果があると思います。もうひとつはやはりメジャー(マリナーズ、ブルージェイズ、カブス)でプレーした経験値です。メジャー流の指導が主流になりつつある台湾において、メジャー経験者は貴重な存在です。本人もコーチを兼任していることもあって、遠慮することなく選手に指導しています」(関係者)
そしてもうひとつは川崎の「性格」にあるという。川崎は練習のアップ時から自ら大きな声を発してチームのムードメーカーとなっている。練習中には「元気でいこう」と日本語でチームを盛り上げているという。味全の練習では、中国、英語に加えて川崎が発する日本語が飛び交う。また、フライを捕球する際には「自分が捕る」という意味を持つ英語の「I got it」が共通で認識されているという。
ストレス軽減で「楽しそうにプレーしていますね」
「チームメイトは恐らく川崎の日本語を理解していないようですが、なんとなく意味することは伝わっているようです。元メジャー選手が盛り上げ役を買って出るわけですから、チームの士気は高まります。日本のようにメディアが常に注視していることがないので、ストレスも減っていると思います。楽しそうにプレーしていますね」(関係者)
指導者の流れはMLBに傾いているものの、今年9月に楽天が台湾の人気球団「ラミゴ・モンキーズ」を買収したことにより、台湾に活躍の場を求める日本の指導者、選手が増える可能性はある。前出の関係者は「アジアのレベルアップを図るためにも日本球界と台湾球界の交流は大切になってくると思います」と話した。