キーワードは「機能分散」?
「子育ての関係の設備やオストメイトのパウチ(編注:排泄物をためるストーマ装具)を洗う器具や大人用ベッド、いろんなものが中に入って非常にややこしくなっている。いろんな人が使うので、車いす使用者が使おうとすると、(トイレが)使われていて、本来使いたい時に使えないことも出ている。車いす用トイレに何でも入れすぎた反省から、今、機能分散を進めようとしている。車いす用トイレは車いす用トイレ、おむつ替え台の設備は別のブースに、オストメイトは別のブースにと分けていこうとしている。それが1つの解決方法だと思います。そうは言っても、『多機能トイレ』がまったくなくなるわけではない。広ければ壁面にスペースがあるので、ああいうこと(ボタンとベッドの位置が近い問題)を防げる。設計者なり施工者が、こういう問題が起こることを自覚して位置を決めることが重要」
とはいうものの、機能の分散化が「望ましいかどうかはまだわからない」という。
「機能分散をしても、どのブースにどの機能があるかわかることが重要。それから、例えば行列ができていたら、自分の使いたい機能以外のブースが空いていても(そこに)入らざるを得ないことがあります。利用者も果たしてこのブースの機能で自分の目的が達せられるのか、ちょっと意識して使っている人がどれだけいるか。みんな、どのトイレのブースも同じだと思っているじゃないですか。いろんな目的のブースを作ったところで、利用者が使い切れるかどうか、次の問題として残っている。それ(機能分散)は始まったばっかりなので、よくわからない。これでうまくいくというのが見えてくるまでには、もう少し時間はかかる」
さらに川内氏は、次のように指摘した。
「トイレそのものが、さまざまな実験を重ねながら来ている。実験を始めたときはそれでもいいが、人々が慣れてくると違う使い方が出てきて、また変えていかなくちゃいけない。ずっと繰り返しです」