背景には、どんどんと増える「目的」が...
今回の多目的トイレの設計を識者はどう見るか。J-CASTニュースでは11月18日、一般社団法人日本トイレ協会の運営委員で、東洋大学客員研究員の川内美彦氏に電話取材した。
川内氏は、「入り口すぐそばの『袖壁』と呼んでいるところにボタンを付けているように見える。あの位置は割と付けがち。狭い中でおむつ替え台なども入れてしまおうとすると、あんなことが起こる」と指摘する。さらに、「確かに赤ん坊が寝転がったら、すぐそばに(ボタンが)ありますので最悪の位置ではあるが、設置する人がそこまで気を配ってやっているかというと、残念ながらそこまで気を配ってない人の方が多いのではないか」などと推測する。
多目的トイレの設計をめぐっては、以前からネット上でツイートが拡散され、注目を集めた。2018年9月にも、子どもの手が届きそうなところにトイレのボタンが設置されている様子を伝えるツイートが拡散された。
川内氏は、「ベビーベッドや赤ん坊を座らせる椅子が、しばしばボタンのそばになることはあります。手動のドアだと高いところに鍵をつけることがよくありますが、電動ドアというのはそれがないので盲点だったのもしれません」と説明する。
また、多目的トイレ(多機能トイレ)に、さまざまな機能を入れすぎたことも、背景にあるのではと指摘する。
「昔は、車いす使用者専用トイレを作っても、今ほど車いすを使う方が社会に出てこなかったこともあり、なかなか使われなかった。そのため掃除道具入れになったり、目的外使用が起こったりして、これはだめだと鍵をかけた。本当に使いたい人が鍵を開けて使う形にして、鍵はお店に保管するような形をとったが、店の時間が終わると、トイレに行けないとか(鍵を保管している)店がどこにあるかがわからないとかいうことが起きて、鍵はやっぱりだめだとなった。鍵をなくすと元のような目的外使用が増えるので、『どなたでもお使いください』ということにして、もっと人々の目に触れるようにして、人々の目で監視しようという方向にいった。東京都は条例で『だれでもトイレ』という名前にしたが、『どなたでもお使いください』としたら、『じゃあどなたでも使えるような設備がいるじゃないか』という話になって、子育て設備などを入れたわけです」