トヨタ自動車の2019年9月中間連結決算は、好調な販売を背景に、売上高が前年同期比4.2%増の15兆2855億円、純利益が2.6%増の1兆2749億円と、ともに中間期として過去最高を更新した。世界市場の伸び悩みで他自動車各社が販売で苦戦する中、トヨタの「独り勝ち」の様相だ。
「多くのお客様にトヨタの車を選んでもらえた」。河合満副社長は11月7日の決算会見でこう語った。その言葉通り、トヨタの2019年度上半期(4~9月)の世界販売台数は、前年同期比3.1%増の545万台と上期として過去最高を記録した。地域別でみると、北米は同0.9%減の143万5725台だったものの、日本(同10.8%増の82万510台)、欧州(同4.0%増の53万8697台)、中国(同8.9%増の83万3331台)で販売台数を増やしている。
市場ごとに適した車種を投入
トヨタの強さの秘密は、大型車から小型車まで幅広い車種をそろえ、市場ごとに適した車種を投入し、異なる需要に柔軟に対応していることだろう。
例えば、環境規制が強まる欧州では「カローラ」などのハイブリッド車(HV)を、中国では富裕層向けに高級車種「レクサス」などの販売を強化。米国では大型車の需要拡大に対応し、米国の新工場で生産する車種を小型車からスポーツタイプ多目的車(SUV)へと急きょ変更した。
さらに、相次ぐ新モデル投入も販売拡大に貢献している。今年度は主力SUVの「RAV4」やセダン「カローラ」などを相次いでフルモデルチェンジしたほか、2020年2月には主力小型車「ヴィッツ」を全面改良し、車名を「ヤリス」に替えて発売予定だ。
こうした販売戦略が奏功して業績拡大を支える一方、トヨタがこれまで得意としてきた「カイゼン(原価改善)」効果が次第に薄れつつあるのは懸念材料だ。
数年前は3000億円規模だった年間の原価改善の金額は、2020年3月期は2500億円程度にとどまる見通し。自動運転や電動化など「CASE」対応にコストがかかることが重荷になっている。
販売拡大とコスト削減
河合副社長は7日の会見で「車には3万から4万点の部品が使われており、一つ一つ仕様を見直す。社員による改善策も出ており、(実行すれば)何百億円にも積み上がる」と説明。「品質が過剰な部分など一つ一つ見ていきたい」と原価改善を続ける姿勢を強調した。
トヨタはさまざまな車種で車台や部品、製造ラインなどを共有する設計開発手法「TNGA」を導入し、原価や設備投資を抑えながら品質を高める取り組みを続けてきた。これをスズキやSUBARUなどグループ全体にも広げ、さらなるコスト削減を進める方針だ。
次世代車の開発には膨大な投資が必要で、回収には長期の時間がかかる。まさに「消耗戦」(業界関係者)になる。販売拡大でライバルに先んじて体力をつけ、同時にコスト削減で筋肉質の経営を身につける――。これが次世代車開発という激しい競争に勝つためにトヨタが目指す道だ。