「ローマ法王」と「ローマ教皇」が混在してきたローマ・カトリック教会トップの表記について、外務省が2019年11月20日、「教皇」を使用すると発表した。
日本のカトリック教会を統括するカトリック中央協議会は「教皇」を使用するように求めてきたが、政府やメディアでは「法王」が主流だった。現時点では、メディアの対応は割れている。
「『教える』という字のほうが、教皇の職務をよく表わす」
「教皇」の使用は、11月23日から26日にかけて予定されているフランシスコ教皇の来日を機に決まった。外務省の大鷹正人外務報道官は記者会見で、変更の理由を(1)カトリック関係者をはじめ、一般に「教皇」という呼称を用いる例が非常に多く見られる(2)日本政府の一般的な呼称として「教皇」を使用する場合、バチカン側として問題ないことが確認できた、などと説明している。
フランシスコ教皇はバチカンの国家元首でもある。日本とバチカンは1942年に国交を樹立し、終戦後一時途絶したものの、1952年に再開している。当時、「Apostolic Nunciature to Japan」が「駐日ローマ法王庁大使館」と訳され、「法王」と「教皇」が混在してきたが、カトリック中央協議会のウェブサイトによると、カトリック教会としては1981年のヨハネ・パウロ2世の来日を機に、「教皇」に統一することにした。「『教える』という字のほうが、教皇の職務をよく表わす」からだ。
駐日ローマ法王庁大使館とバチカンは名称変更求めていない
すでに削除されているが、協議会のウェブサイトには、かつてこんな文言もあった。
「日本政府に登録した国名は、実際に政変が起きて国名が変わるなどしない限り、変更できないのだそうです。こうしていまでも『法王』と『教皇』が混用されているのです。皆様には、『教皇』を使っていただくよう、お願いする次第です」
ただ、この「ローマ法王庁」の名称問題が18年2月の衆院予算委員会で取り上げられ、河野太郎外相(当時)が
「直ちに駐日ローマ法王庁の大使並びに大使館及びバチカンに問合せをいたしましたが、いずれからも名称変更を求めていないという御返答でございました」
と答弁。15年に黒海沿岸にある国「グルジア」の呼び名を「ジョージア」に改めたことを引きあいに、希望があれば呼称を変更する可能性に言及していた。
「いずれの大使館からも名称変更の要請がありましたときには、外務省としてしっかり対応をする」
政府が「教皇」の使用を決めたことで、メディアも歩調を合わせつつある。例えば朝日新聞は11月20日から22日にかけて広島県版で「ローマ法王 広島に」と題した連載を掲載したが、最終回の22日のタイトルだけ「ローマ教皇 広島に」。最後に「法王の表記を『教皇』に改めました」という注意書きが入った。11月22日夕方の時点では、朝日以外にも毎日、共同、時事、NHKが「教皇」とする一方で、読売は「法王」、日経は「ローマ教皇(法王)」とし、産経はウェブ版で「『ローマ教皇』に表記を変更します」との「おことわり」を掲載している。