令和元年も、あと1カ月余りとなった。この時期、日本の風物詩の1つといえば「忠臣蔵」だろう。舞台は江戸時代中期。江戸城殿中の松之大廊下で、赤穂藩藩主の浅野内匠頭が、高家肝煎の吉良上野介の暴挙に耐え兼ね、殿中にもかかわらず刀を抜き、傷を負わせたことに端を発する。
浅野は即日、切腹を命じられ、一方の吉良にはおとがめなし。赤穂四十七士は亡き主君の無念を晴らすために結束、吉良邸を襲撃して仇討ちを果たす...というストーリーだ。討ち入りの時期が雪の降る12月だったこと、また日本人が「勧善懲悪」を好む傾向もあり、年末には必ずと言っていいほどテレビで放映される。
上限9500万...「仇討ち中止」にするか「予算内で戦う」のか
忠臣蔵を題材とした作品はこれまで無数に作られ、さまざまな切り口が試みられてきた。実は吉良上野介が善人だった、といった立場逆転ものから、背後に幕府上層部の陰謀が、といった権力暗闘もの、四十七士の妻などに焦点を当てた女性もの――もはや、普通に思いつくようなアレンジはやり尽くされた感さえある。
そんな中、さらに違った角度から迫った忠臣蔵映画が、2019年11月22日、全国で封切られる。その名も「決算!忠臣蔵」。これまでの作品は「仇討ち」がテーマだったが、同作は「討ち入りには超、お金がかかる!」というもの。亡き主君の弔い合戦に向かいたいが、予算の上限は9500万。「行く?」「やめる??」といったお金にまつわるやりとりがコミカルかつ軽妙にされ、仇討ちなのに思わず笑ってしまう内容に仕上がっている。
これを現代風に置き換えると、江戸時代における「優良企業倒産事件」的なことになる。藩=会社、武士=サラリーマンという図式に置き換えると分かりやすいかもしれない。つまり、社長を失った中での社員による「一大プロジェクト敢行」ともいえよう。
しかし藩士たちは日々の生活費、江戸までの往復旅費、討ち入りするための武具費...数え上げたらキリがなく、その間にもお金は出て行くばかり...という泣きそうな状況が続く。そんな困難なプロジェクトを主導するのが、ダブル主演が演じる2人のメーンキャラクターだ。