日韓でベストセラーになっている「反日種族主義」(日本版は文芸春秋刊)の編著者、李栄薫(イ・ヨンフン)元ソウル大教授が2019年11月21日、東京・内幸町の日本記者クラブで会見した。
文在寅政権は「反日運動家として非常に訓練されている集団」
著書では、李氏をはじめとする経済史学などの専門家6人が一次資料にあたったうえで、(1)慰安婦制度は公娼制の軍事的編成にすぎない(2)徴用工問題で裁判を起こした人は、「強制連行」などではなく募集と斡旋に応じて日本に渡った、などと主張している。これ以外にも、日韓関係について韓国で通説だと考えられてきた論点に反論しており、曺国(チョ・グク)前法相がSNSで「吐き気がする」などと反発したことも話題になった。李氏は、比較的「反日教育」を手厚く受けた世代に売れているとして、「歴史は進歩している」などと手応えを語った。
「反日種族主義」は韓国で19年7月に発売され、10万部を発行。11月に発売されたばかりの日本でもすでに25万部を発行した。書籍では、いわゆる「反日」の根本には、シャーマニズムに基づく「種族主義」があると説いており、李氏は記者会見でも、韓国の与党「共に民主党」の綱領で「抗日精神を継承している」とうたっていることを指摘しながら、文在寅(ムン・ジェイン)政権と与党を「反日運動家として非常に訓練されている集団」だと表現。日本企業に対して元徴用工らへの賠償を命じる判決を出した韓国大法院(最高裁)も、「その影響を受けている」とした。
「政治的な攻撃を沢山受けているが...」
読者層については、
「韓国人全体に向けて書いた。歴史的な病の根源がどこにあるのかを書いて、皆さんに読んでもらいたかった」
とした上で、30代に多く売れていることを明かした。「現代の韓国の30~40代は反日教育を受けており、50~60代よりも強い反日感情を持っている」といい、30代に対して好評だったことを「遅い速度ではあるが、歴史は進歩しているとみている」と歓迎した。
さらに、「反日種族主義」には様々な反響が寄せられたことを受けて、反論のための次回作にも意欲的だった。
「私の立場は、これまでの歴史研究における方法論を批判、反省するという意味合いを強く持っている。今後の続編に関する話は、まだ『これ』というふうに決定的に決まったものはないので、今この場では申し上げにくい。政治的な攻撃をたくさん受けているが、今後、私たちの考えは本にまとめて世に出していきたい」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)