首相主催の「桜を見る会」の問題で、菅義偉官房長官が2019年11月20日の衆院内閣委員会で、招待者の内訳を初めて明らかにした。約1万5000人の招待者のうち、約9000人が事実上の「政治枠」で、そのうち1000人が安倍晋三首相からの推薦だった。
1000人の中には安倍昭恵夫人が推薦した人が含まれていたことも明らかになった。「私人」の昭恵氏が公的行事への招待者選びに関与していた疑いも浮上した形で、野党はさらに追及する構えだ。
「安倍事務所において幅広く参加を募る中で、夫人からの推薦もあった」
政府は招待者名簿を「廃棄した」と説明しており、菅氏は「内閣官房および内閣府の事務方の話などを総合」した結果として内訳を説明した。「各省庁推薦の各界功労者、各国大使等、国会議員、勲章受章者など」が約6000人で、残り9000人程度について「内閣官房が推薦をいただくなどした上で、内閣官房および内閣府で取りまとめている」。この9000人の内訳は、「自民党関係者の推薦」が約6000人、「国際貢献・芸術文化等の特別招待者、報道関係者、公明党関係者、元国会議員など」「総理から」「副総理、官房長官、官房副長官から」が、それぞれ1000人程度だ。
さらに、大西証史・内閣官房内閣審議官は、
「安倍事務所において幅広く参加を募る中で、夫人からの推薦もあったとのことだ」
と明かした。
ここで、野党としては大きく2つの点で追及を強める考えだ。ひとつが、政府が主張してきた「桜を見る会」の性質との矛盾だ。初鹿明博衆院議員の10月の質問主意書に対して、政府は
「内閣総理大臣が各界において功績、功労のあった方々を招き、日頃の御苦労を慰労するとともに、親しく懇談する内閣の公的行事」
と答弁している。今回明らかにされた9000人が「各界において功績、功労のあった方々」にあたるかどうか、という問題だ。
「なぜ自分が招待されたのか分からない」
二つ目が、こういった「内閣の公的行事」に「私人」の昭恵氏が招待者を推薦することの是非だ。昭恵氏をめぐっては、森友学園をめぐる問題が取りざたされていた17年3月、上西小百合衆院議員(当時)の質問主意書に対して、政府は
「総理夫人とは、公人ではなく私人であると認識しており、それはお尋ねの『安倍昭恵総理夫人』についても同様である」
との答弁を閣議決定している。
内閣委員会での一連の答弁は、共産党の宮本徹衆院議員の質問に対するもので、宮本氏は共産党の機関紙「しんぶん赤旗」日曜版(10月13日付)の記事を引用しながら質問した。記事では、
「なぜ自分が招待されたのか分からない」
「思い当たるのは、あるイベントで昭恵さんと名刺交換をしたこと。それ以降、会の招待状が届くようになった」
「僕は政治家の知り合いがいないし、自民党支持者でもない。『昭恵夫人枠』としか考えられない」
などとする「関東近県に住む男性の言葉」を紹介している。仮に証言が正確だとすれば、「私人」が、一度名刺交換しただけの人物を推薦していたことになる。
安倍氏本人にも追及が強まりそうだ。安倍氏は11月8日の参院予算委員会で
「私は、主催者としてのあいさつや招待者の接遇は行うが、招待者の取りまとめ等には関与していない」
と答弁していたが、11月20日の参院本会議では
「私の事務所においては、後援会の関係者を含め、地域で活躍されているなど、桜を見る会への参加にふさわしいと思われる方をはじめとして、幅広く参加希望者を募ってきたところだ。私自身も事務所から相談を受ければ、推薦者についての意見を言うこともあった」
と軌道修正。野党は11月8日の答弁が虚偽答弁だったとして、反発を強めている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)