大相撲九州場所(福岡国際センター)は2019年11月19日に10日目を迎え、優勝争いも終盤戦へ差しかかってきた。同日時点で横綱の白鵬が1敗、これを小結の朝乃山、前頭13枚目の輝(かがやき)が2敗で追う展開となっている。
2019年の優勝力士は毎場所、違う
ところで、今年行われた各場所の優勝力士を見ると、面白いことに気付く。
初=玉鷲、春=白鵬、夏=朝乃山、名古屋=鶴竜、秋=御嶽海、九州=?
つまり、今年はここまでの5場所とも、優勝力士が違うのだ。白鵬、朝乃山はすでに優勝を経験している。仮に輝が優勝すると、年6場所の優勝力士が全員違う...ということになる。
大相撲が現行の「年6場所」になったのは、1958年のことだ。これ以降、6場所の優勝力士がすべて異なっていたのは、1972年と1991年の2回しかない。それぞれの年の優勝力士を見てみると、
【1972年】
初=栃東(初代)、春=長谷川、夏=輪島、名古屋=高見山、秋=北の富士、九州=琴櫻
【1991年】
初=霧島、春=北勝海、夏=旭富士、名古屋=琴富士、秋=琴錦、九州=小錦
という具合だ。
「6場所優勝力士が全部違う」ことの意味とは?
さらに、この事実を紐解くと、興味深い事実が浮き彫りとなる。1972年を考えるとこれ以前の70年代初頭は、北の富士、玉の海が時代を築いてきた。ところが71年に玉の海は急逝、残った北の富士も、72年夏場所で初優勝するなど力を付けてきた輪島、さらに続いて頭角を現した北の湖にその座を譲る形となって74年に引退した。その後、この2人を中心とした「輪湖時代」が築かれる。
1991年にも似たようなことが言える。それまでは千代の富士の独壇場だったが、若手の若花田(若乃花)、貴花田(貴乃花)、曙らの若手が台頭してきた時だった。同年夏場所初日、貴花田に敗れ、3日目には貴闘力にも敗れた。その夜、会見を開き「体力の限界...。気力も尽き、引退することになりました」と嗚咽(おえつ)を漏らしながら語った姿を、記憶されている読者も多いだろう。
再び、2019年に目を向けてみよう。幕内最高優勝42回という金字塔を打ち立てた白鵬も、現在34歳。20代後半は無類の強さを誇ったが、ここ数年はケガでの休場が目立つなど、明らかに「曲がり角」に差しかかっている。これを裏付けるかのように、2019年9月には年寄襲名の前提条件となる日本国籍取得を発表。これは「引退を念頭に置きつつ、角界に残る」との意思表示に他ならない。
「新時代」のキーマンになれるか輝
あくまで1つの目安だが「6場所の優勝力士が全員違う=角界勢力図の転換期」ということが言えるのかもしれない。
さて、ここで注目したいのが輝だ。石川県出身で192センチ、163キロと申し分ない体格を持つ。これまでは「突き押し相撲」だったが、長い腕の回転がいまいち遅く、なかなか思うような星を上げられなかった。しかし「四つ相撲」にスタイルを変えたことで、長い腕が相手に絡みつくようになったという。
19日に行われる10日目で勝ち越せば、自己最速。新時代に輝いてほしいものだ。
(J-CASTニュース編集部 山田大介)