NHK(日本放送協会)のインターネット常時同時配信をめぐって、総務省との綱引きが続いている。
2019年5月に成立した改正放送法によって、NHKのネット同時配信が解禁された。NHKは今年度中に、総合テレビとEテレの同時配信(当初は1日あたり17時間程度)を行おうとしているが、総務省から「宿題」が出され、ひとまず棚上げとなった。
総務省は収支悪化を懸念
NHKは10月15日、放送法改正を受けた「インターネット活用業務実施基準(案)」(以下、NHK案)の認可を総務省に申請した。総務省サイトに掲載されたそれには、どのような同時配信サービスを行おうとしているかが書かれている。
NHK案によると、すでに提供されている有料ストリーミング配信(NHKオンデマンド)に加えて、地上波テレビの「同時配信」や「見逃し配信」を計画。配信サイトやアプリの画面上に、受信契約を確認するメッセージを表示することにより、「利用者に対価を求めることなく実施する」としている。
その一方で、年2回(1回あたり24時間以内)に限り、確認メッセージを非表示にすることもあるとして、いわゆる「タダ見」ができる余地も残している。これは「サービスの利用申込みを促進するため」(第15条4項)の措置と位置付けていて、附則第3条6項では2020東京五輪・パラリンピック時にも行うことがあるとしている。
そんなNHK案に対して、総務省が11月8日に「基本的考え方」を公表した。そこではNHKが業務、受信料、ガバナンスの「三位一体の改革」が求められる状況であると指摘。NHKはネット活用業務の費用を「受信料収入の2.5%」に定めていたが、別枠扱いのネット関連費用も含めると「約3.8%相当」になるとし、ネット事業拡大による収支悪化への懸念を示している。高市早苗総務相も同日、会見で「考え方」について説明し、12月8日まで意見募集を行うと告知した。それらも勘案して、NHK案の審査を進める予定だ。