アサヒグループホールディングス(GHD)の株価が2019年11月6日、一時前日終値比7.2%(397円)安の5118円まで急落した。前日5日の取引終了後に発表された業績と配当の予想を下方修正したことが売りを招いた。
年初から上昇基調をたどってきたアサヒGHDの株価。その後はやや持ち直しているが、転機となる可能性がある。
さほど「深刻でない」とも読めるが...
まずは5日の発表内容を確認しておこう。2019年12月期連結純利益(国際会計基準)について、前期比微増の1515億円としていた従来予想から95億円減額し、前期比6.0%減の1420億円に下方修正した。下方修正は8月1日に続いて今期2回目で、しかも「減益」となったことから、投資家の失望売りを呼んでしまった。売上高にあたる売上収益も従来予想より335億円減額し、前期比1.6%減の2兆870億円と減収を見込んだ。
今回の下方修正の主な要因は円高・ユーロ安によってアンハイザー・ブッシュ・インベブから買収した欧州事業の円換算の収益が目減りすることだ。また、夏場の長雨の影響で飲料事業の売れ行きが振るわず、需要喚起の宣伝費が膨らんだことなども響く。ビールなど日本製品の不買運動が続く韓国での売り上げが減っていることも影響する。
一方、酒類が軽減税率の対象外となった消費税率の10%への引き上げに関しては、駆け込み購入と反動減の山・谷が前回の税率引き上げ時より小さい模様。アサヒGHDの小路明善社長は日経新聞のインタビューで「10月末から11月中旬ころには平準化し、そこから巡航速度だろう」と話している。
こうして見ると下方修正の内容は一時的なものが多く、さほど深刻ではないと受け取ることができなくもない。欧州事業も現地通貨ベースでは好調を維持しているようだ。
配当予想の引き下げがWパンチに
にもかかわらず、ダブルパンチで市場心理を冷やしたのが配当予想の引き下げだった。従来の年間配当予想は1株106円だったが、6円減額し100円とした。前期実績(99円)からの増配幅は7円から1円に縮む。今期はすでに中間配当52円を実施しているので、期末配当は48円となり、前期実績(54円)を下回る。アサヒGHDは「業績予想を修正したことに伴うもの」と説明している。SMBC日興証券は「アサヒらしからぬ失策」と題した5日付リポートで「想定外のネガティブ。株主重視の姿勢を貫き、踏ん張ってほしかった」と失望ぶりを露わにした。
5日の発表を受けて6日のアサヒGHD株は急落。当日高値が前日安値を175円も下回り、チャート図に大きく「窓を開ける」節目の展開となった。終値は前日比6.1%(334円)安の5181円。その後はやや持ち直し、14日時点では5200円台半ばまで戻しているが、勢いは鈍い。
アサヒGHDの株価は1月15日に年初来安値の4171円をつけた後、10月16日の5578円の年初来高値までほぼ上昇基調をたどっていた。この間、国内でビールが爆発的に売れたわけではないが、7月に発表した豪州事業を約1兆2000億円で買収する案件など思い切った海外展開が評価されていた。そうした中で配当減額による投資家の失望売りというつまずきを回復できるか、市場は国内ビール事業の改革など次の一手を注視している。