ヤフーを展開するZホールディングス(HD)とLINEが経営統合に向けた交渉に入っていることが明らかになった。2019年11月13日夜に日本経済新聞が電子版で報じ、14日朝に両社が協議を認める声明を出した。
ヤフーはポータルサイトとしては最大規模で、LINEは通信用アプリとしては圧倒的なシェアを持つ。これに加えて、両社はネット通販(EC)や金融など幅広いサービスを展開している。それぞれが誇る利用者数は、約5000万人と約8000万人。巨大プラットフォーマー同士の経営統合で何を目指すのか。
両社は類似サービスを展開
日経の報道の直後から、各社も相次いで両社の統合に向けた動きを報じた。ZHDとLINEが公式に反応したのは11月14日朝。「現時点で決定した事実はありません」といった紋切り型の文言とともに、
「当社とLINE株式会社が本件について協議を行っていることは事実」(Zホールディングス)
「企業価値向上のための施策の一つとして検討を進めていることは事実」(LINE)
などと協議を行っていることを認めた。ソフトバンクはZHDに約45%出資し、韓国NAVER(ネイバー)はLINE株の約73%を保有している。日経によるとソフトバンクとネイバーを交えて交渉が進んでおり、12月中にも統合の基本合意を目指すという。
両グループは「ヤフーショッピング」と「LINEショッピング」、「PayPay(ペイペイ)」と「LINE Pay」など、類似のサービスを展開。経営統合後は、これらのサービスも統合される可能性もある。その先にあるとみられるのが、あらゆる分野をひとつのアプリで完結させる「垂直統合」だ。
PayPayを「Alipay」に位置づける?
ソフトバンクが出資するアリババグループは、全世界に約10億人の利用者を抱える決済サービス「Alipay(アリペイ)」を展開している。アリペイは単なる電子マネーに過ぎず、「淘宝(タオバオ)」といったショッピングモールや、個人間送金やローンを始めとする金融サービスへの「入り口」の役割を果たしている。
一方、ヤフーはショッピングサイト「PayPayモール」やフリマサービスサイト「PayPayフリマ」を19年10月に相次いでスタート。11月14日には、ZHDがファッション通販サイト「ZOZOTOWN」運営会社の株式50.1%を取得し、連結子会社化を完了したと発表した。アリババにとってのAlipayと同様、統合によるスケールメリットを生かしながら、PayPayをあらゆる事業の入り口として位置付ける狙いもあるとみられる。
ただ、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのいわゆる「GAFA(ガーファ)」を筆頭にIT企業の寡占化が進む中での経営統合で、独占禁止法に抵触する可能性も指摘されている。公正取引委員会の動向も注目される。