「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ」(WBSS)を制したWBAバンタム級スーパー、IBFバンタム級王者・井上尚弥(26)=大橋=に他団体王者から「挑戦状」が舞い込んでいる。WBO王者ゾラニ・テテ(31)=南アフリカ=、WBC王者ノルディーヌ・ウバーリ(33)=フランス=らタイトルホルダーに加え、「問題児」ルイス・ネリ(24)=メキシコ=までもが井上を挑発するなど、世界のバンタム級トップ選手が井上の争奪戦を繰り広げている。
井上がノニト・ドネア(36)=フィリピン=との死闘を制し、トーナメント優勝を決めた直後からにわかに周辺が騒がしくなった。フィリピンのレジェンドを破り、世界的な評価を受けた井上に、ここぞとばかりにテテ、ウバーリら他団体王者が統一戦を要望。井上とのビッグマッチを見込んで、井上サイドの興味を引くために挑発的な口調で懸命のアピール合戦となっている。
ドネア戦の戦略を巡り井上陣営を批判
WBO、WBCのタイトルホルダーが井上に「挑戦状」を叩きつけるなか、これに便乗する形で井上を挑発しているのがネリだ。ネリは2019年11月23日に、井上との対戦経験を持つ元IBF王者エマニエル・ロドリゲス(プエルトリコ)との一戦を控えるが、すでにロドリゲスに勝ったとばかりに井上との対戦に関して言及している。
米スポーツ専門局「ESPN」スペイン語版によると、ネリは井上VSドネア戦について「彼らはノニトを過小評価していた」と井上陣営を批判。さらに「(井上が)戦いたければオレはここにいる」とコメントし、井上の強打には「あのパンチでは効かない」と豪語している。ネリの自信がどこから生まれるのかは不明だが、王者に対してリスペクトを欠く相変わらずの発言で挑発している。
井上は階級を上げての複数階級制覇よりもバンタム級にとどまり王座統一を望んでおり、実弟・拓真(23)=大橋=を下して王座を統一したWBC王者ウバーリとの対戦を口にしている。一方のウバーリも迎え撃つ構えを見せている。米サイト「ファイトニュース・ドットコム」によると、井上との対戦について「対戦は早ければ早いほどいい」と早期対決を望んでおり、「私が彼と戦うなら、彼を打ち倒すだろう」と勝利宣言している。
井上VSウバーリの対戦の可能性は...
井上、ウバーリサイドの思惑は一致するものの、現実的にウバーリの次戦はランク1位との指名試合が見込まれ、ネリVSロドリゲス戦の勝者と対戦する可能性が高い。ただ、交渉の余地はあるとみられ、井上と契約を結ぶ米大手プロモーション会社のトップランクがWBC及びウバーリ陣営、指名挑戦権を持つ陣営との交渉をまとめ、指名試合の前に井上VSウバーリ戦が実現する可能性も否定できない。
また、WBO王者テテは、11月30日に暫定王者ジョンリル・カシメロ(30)=フィリピン=との王座統一戦を控えており、井上との対戦はここでの勝利が絶対条件となる。ただ、テテも目の前の一戦を通り越して井上戦を猛アピール。南アフリカの地元紙によると、テテは井上が4団体のベルトを統一していない事実を指摘し、よって「真の王者」ではないと挑発している。
右眼窩(がんか)底など2カ所を骨折しながら世界5階級制覇のレジェンドに打ち勝った「モンスター」。この一戦で世界的評価がさらに高まり、井上とのビッグマッチを求めてネリまでも「挑戦状」を送り付ける事態に。今後、井上は王座統一を視野にいれつつ、自身の持つタイトルの防衛を重ねていく方向だが、いずれにせよ世界のバンタム級は井上を中心に回っていくだろう。