「寄り合い所帯」の難しさ露呈
業績不振に加え、不透明な経営実態や企業統治(コーポレート・ガバナンス)の不全も批判を招いている。A-FIVEでは、約6億円の損失を出した案件の事実上の責任者だった元専務が約1400万円の退職慰労金を満額受け取り、70万円だけ自主返納した。A-FIVEは弁護士事務所による調査で満額支給が妥当と結論づけた、と説明しているが、誰も責任を問われないままの幕引きとなった。
2018年末、先端技術や事業再編に投資する産業革新投資機構(JIC)で、役員報酬や運営方法をめぐって経営陣と監督官庁の経済産業省が対立し、役員が大量辞任する騒ぎが起きたことは、メディアでも大きく報じられた通りだ。成果を上げるため、民間の投資ファンド並みの経営スピードと高額報酬を求める民間出身の経営陣と、前例踏襲といったお役所的な運営を重んじる経産省がぶつかった結果だった。
「新規の投資先を開拓しても、安全運転を目指す役所サイドからストップをかけられる」とこぼすスタッフの声は、他の官民ファンドからも聞こえてくる。生き馬の目を抜くような投資の世界で、「官」の判断の遅さは致命傷になりかねず、官民ファンドという「寄り合い所帯」の運営の難しさを感じさせる。
クールジャパン機構とA-FIVEのほか、交通インフラ開発を支援する海外交通・都市開発事業支援機構など2ファンドがそれぞれ30億円以上の累積赤字を抱え、これら4ファンドで累積赤字の総額は360億円超に上る。安倍首相が誇るように、官民ファンド全体では5800億円の黒字だが、その4分の3に当たる4364億円は第2次安倍政権発足(2012年末)より前の2009年に設立された旧産業革新機構(現JIC)が稼ぎ出したものだ。