安倍晋三政権が「成長戦略の目玉」に掲げてきた官民ファンドの苦戦が目立っている。
「『日本の魅力』を事業化し、海外需要の獲得につなげる」とうたう海外需要開拓支援機構(通称・クールジャパン機構)をはじめ、不振の4ファンドの累積赤字は、2018年度末で360億円超に達した。安倍首相は国会で「官民ファンド全体では黒字」と強調するが、これらのファンド以外にも火種はくすぶっている。
「よく知らないファンドからわざわざ資金調達しようとする生産者は...」
「累積損失について厳しいご指摘も受け止めなければいけないが、官民ファンド全体としてみれば、損失を大幅に上回る利益、5800億円の利益を上げている」。10月15日の参院予算委員会で、蓮舫氏(立憲民主党)から「(官民ファンドは)出口に向かうべきではないか」とただされた安倍首相は、胸を張ってこう答えた。
政府と民間が共同出資する官民ファンドは、民間だけではリスクが大きい新たな産業などに投資することで、民間投資の呼び水とし、日本経済の成長を後押ししようとつくられてきた。緊急経済対策の一環として設立されるケースも多く、第2次安倍政権の発足後に急速に増加。関係閣僚による会議で経営状況を確認している主な官民ファンドは現在、13あり、2018年度末時点で政府が約9180億円、民間が約3486億円の出資などを行っている。
ところがここ数年、鳴り物入りのファンドの迷走が次々と明らかになってきている。筆頭がクールジャパン機構だ。マレーシア・クアラルンプールに三越伊勢丹ホールディングスと開業した「ジャパン・ストア」など、投資案件が相次いでつまずき、2018年度末の累積赤字は179億円に膨らんだ。昨年、経営陣を刷新して新規投資に注力しているが、巻き返せるかは見通せない。
農林水産物の生産や加工、流通を手がける「6次産業化」を支援する農林漁業成長産業化支援機構(通称・A-FIVE)も、投資実績が伸び悩み、2018年度末の累積赤字が92億円に上る。関係者は「農協や金融機関から融資を受けられるのに、よく知らないファンドからわざわざ資金調達しようとする生産者は少ない」と明かす。