2019年11月30日に開業予定の相鉄・JR直通線。相模鉄道(相鉄)とJR東日本の相互直通運転がこの路線を介して始まり、東京と神奈川を乗り換えなしで直結する新しい鉄道ルートができることになる。
相鉄・JR東日本・そして直通線沿線の3者に大きなインパクトをもたらす路線で既に開業後のダイヤも公表されているが、新規開業する羽沢横浜国大駅の時刻表を見ると、首都圏都市部とは思えない意外な列車本数で、開業後のダイヤを見たネットユーザーや鉄道ファンからは、「秘境駅か」と突っ込まれてもいる。
ダイヤ編成の難しさが影響か
相鉄・JR直通線の列車本数は平日・土休日ともに46本が設定される。相鉄側からJRへと向かうルートで考えると、相鉄本線・西谷駅で従来の横浜駅方面に向かう路線と分岐。新駅である羽沢横浜国大駅を経由し、JR武蔵小杉駅へと接続し、渋谷・新宿方面にアクセスる。とりわけ横浜市西部の相鉄沿線から川崎・東京へのアクセス性は抜群によくなるが、懸念は本数だ。
時刻表を見ると、運転間隔は朝ラッシュ時で10~20分間隔、データイムには約30分間隔となっている。
具体的に見てみよう。横浜方面と直通線方面のすべての列車が停車する相鉄二俣川駅の平日朝8時台の本数を比較すると、従来の横浜方面に向かう列車が22本に対し、直通線方面は5本にとどまる。直通線ではラッシュ時でも運転間隔は10~20分間隔にとどまり、さらに、唯一新規開業する途中駅の羽沢横浜国大駅の時刻表を見ると、11時台から15時台の間はすべて30分間隔、毎時2本の運転。これは横浜市内の駅としては異例の少なさである。
横浜市内で羽沢横浜国大駅に匹敵するくらい本数の少ない路線には東急こどもの国線とJR鶴見線がある。しかし両線でもデータイムの運転本数は20分間隔の毎時3本で、特に鶴見線は臨海部の工業地帯を走るという特殊な事情がある。相鉄とJRという大動脈同士を結ぶ線としては、心もとない本数である。この本数となった背景は何だろうか。
J-CASTニュースが羽沢横浜国大駅でどの程度需要を見込んでいるかを相鉄に取材したところ、同駅の乗降人員は約1万人を想定しているとのことである。2018年度の相鉄全駅の乗降人員は、最も少ないゆめが丘駅が2198人、これに次ぐ平沼橋駅が8768人。想定通りであれば、羽沢横浜国大駅は3番目に乗降人員が少ない駅になる計算だ。
とはいえ列車本数には格段の差がある。こうなってしまったのは、直通線特有の事情になる。JR側の過密ダイヤや貨物列車の存在だ。
相鉄・JR直通線は相鉄側の西谷駅で相鉄本線から分岐し、羽沢横浜国大駅を経由してJR武蔵小杉駅でJRに合流するが、直通線にはすでに湘南新宿ラインと横須賀線の列車が走り、羽沢横浜国大周辺では貨物列車とも線路を共有する。特に編成が長く、電車に比べて加速度の遅い貨物列車が間に入るとダイヤ編成は難しくなる。ダイヤ編成を主導したのはJR東日本だが、前出のダイヤとなった理由については取材に対し「線路を共有する横須賀線・貨物線・湘南新宿ラインの現状を鑑みて編成した」と答えている。
東急直通後に真価を発揮か
需要を見込んでいないわけではないが、路線の特殊な事情で首都圏としてローカルな本数にとどまった羽沢横浜国大駅、現在同駅周辺はJR貨物の横浜羽沢駅があるほかは住宅と田畑が広がるエリアだが、駅周辺の開発も今のところは低調で、列車本数も開発を推進するには至らないだろう。「秘境駅」との揶揄には、こうした背景がある。
同駅が真価を発揮するのは、2022年下半期開始予定の相鉄・東急の直通運転だろうか。東急方面とJR方面は同駅から東京寄りで分岐する計画で、東急側は貨物列車やJRダイヤの影響を受けにくく、新横浜駅に直通できるメリットがある。相鉄側から新横浜・東急線方面への増発が実現すれば、JR直通時点では渋谷・新宿方面に限られている行き先もさらに増える。都市部の駅らしい列車本数になりうるだろう。